研究課題
日本列島のリアス海岸周辺における海成段丘は,鍵層が発見されないことなどのため,離水年代が不明である.そこで本研究では,リアス海岸などの海成段丘を対象に従来とは異なる年代測定手法であるルミネッセンス年代測定法を適用し,リアス海岸や類似した岩石海岸が卓越する沿岸地域において,中期更新世以降に形成された海成段丘の高分解能な地形面編年をおこなうことを目的とする.まず,空中写真判読に基づき,対象地域の海成段丘地形分類図を作成した.平成29年度は,陸中海岸中部および志摩半島周辺,佐渡島北西部のリアス海岸を呈する沿岸部において,海成段丘の地形・堆積物の記載と試料採取をおこなった.pIRIR年代測定結果と独立年代指標などとの比較検討結果に基づき,pIRIR年代測定法の測定条件や試料採取の基準を確立し,信頼性などを確認した.平成30年度には奄美大島,志摩半島,能登半島,佐渡島北西部において,海成段丘に関する野外調査をおこなった.併せて佐渡島南西部の海成段丘においてオールコア試料を得た.ここまでの過程では,基盤岩のルミネッセンス年代測定による侵食年代推定を試行するための現成の波蝕棚における試料採取もおこない,試料処理方法を確立した.最終年度である令和元年度には,奄美大島における複数のトレンチにおいて海成堆積物試料を得た.さらに能登半島および志摩半島周辺においても補備的な野外調査をおこなった.最終年度を含むこれらの野外調査やpIRIR年代測定結果により,調査対象地域においてはMIS 9からMIS 5aまでのpIRIR年代値が得られ,中期更新世以降の海成段丘の離水年代が明らかとなった.これらの結果は,pIRIR年代測定を適用することで,鍵層の発見が困難なリアス海岸などにおいても,中期更新世以降の高分解能な海成段丘発達史や地域的な地殻変動の議論が絶対年代に基づき可能であることを示すものである.
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第四紀研究
巻: 58 ページ: 353-375
https://doi.org/10.4116/jaqua.58.353