研究課題/領域番号 |
17K01238
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
海津 正倫 奈良大学, 文学部, 教授 (50127883)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 沖積低地 / 微地形 / 水害 / 液状化 / 旧河道 |
研究実績の概要 |
沖積平野や海岸平野における水害などの自然災害に関しては,これまで微地形と洪水・氾濫状態などの対応が良好であることから地形分類にもとづいて土地条件図や治水地形分類図などが作られてきた.しかしながら,従来一般的に説明されてきた地形と自然災害との関係に関してはある程度の普遍性は持つものの,例外的な事例も多く発生していて,地域の防災を考える上でも地形や土地条件との関係をより詳細に検討することが必要となっている. このような観点から,本研究では自然災害と低地の微地形条件との関係をより精緻に再検討することを目的としている.本年度においては沖積平野・海岸平野における微地形について既存の研究で解明されてきたことを整理すると共に,従来の空中写真判読のみならず,高精度の地盤高データであるDEMを利用して詳細に検討するとともに,洪水・氾濫や液状化等の自然災害に対する低地の場所的特性をふまえた脆弱性を再検討しつつある.また,水害をはじめとする自然災害が顕著に発生しやすい沖積低地の微地形の地形環境的特性を把握すると共に,それぞれの微地形が自然災害に対してこれまでどのような関わりを持ってきたかについて地形環境の特性をふまえながら検討した.その結果,沖積低地の微地形の中でも,後背湿地において地震時の被害が大きいことや,内水氾濫が発生しやすいこと,旧河道が水害や地震にともなう液状化現象にかかわる特徴的な対応を示すことなどが明らかになり,とくに,地震との関係においては堆積物の状態を含めたさらなる検討が必要であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属大学の定年退職の年であったため,それに関わってさまざまな雑務が重なったため.
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今後の研究の推進方策 |
具体的対象地域の沖積低地について空中写真判読・DEMを用いた地形解析などからの微地形把握の再検討をおこない,低地の微地形区分の問題点を明確化する.また,DEM(DSM)が十分に整備されていない途上国への技術移転を念頭に, AW3D全世界デジタル3D地形データ(DSM/DTM,解像度4m)およびALOS全球数値地表モデル(DSM,解像度30m),GeoEyeなどを用いた微地形把握を試みる.洪水・氾濫状況と土地条件との関係については,過去の水害については既存の調査結果を参考にすると共に,被災直後に撮影された空中写真や斜め航空写真のほか行政などによるさまざまな浸水・氾濫記録にもとづいて,低地の微地形と水害の氾濫域や液状化発生地点などとの関係について検討する.また,これらの結果にもとづいて,低地の地形環境の特性および洪水による被災状況との関係について整理・検討し,地形環境の観点から洪水被害に脆弱な場所的特性を抽出するとともに,微地形分類との整合性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は所属大学の定年退職の年であったため,それに関わってさまざまな雑務が重なり,また,先方の都合などもあって海外で予定していた現地調査などに出かけることができなかった.平成30年度はタイ王国や国内での現地調査に積極的に出かける予定で,ベトナムで開催される国際学会にも参加し,発表することを予定している.
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