研究実績の概要 |
沖積平野や海岸平野における水害などの自然災害に関しては,低地の微地形と洪水・氾濫状態などの対応が良好であることからこれまで地形分類にもとづいて土地条件図や治水地形分類図などが作られてきた.近年,自然災害に関してはハザードマップに関する注目が高まっているが,自然災害のリスクに関しては土地の本来的な特性を示す地形分類図が有効であり,地域の防災を考える上でも地形分類図を活用して地形や土地条件との関係をより詳細に把握することが必要となっている. 2019年の多摩川と支流の平瀬川との合流点付近の水害に関しては,犠牲者を出したマンションの立地場所が旧河道にあたっており,地形的には溢れた水が集まりやすく浸水深が深くなる場所であったことを指摘し,現在の土地利用からは地形の違いを読み取ることが困難である武蔵小杉付近に関しては,タワーマンションの立地場所が地形的には後背湿地にあたっており,内水氾濫しやすい場所にあたること,また,横須賀線の武蔵小杉駅付近が旧河道の場所であり,浸水・湛水しやすい場所であることが地形分類図から把握できることを指摘し,地形分類図の有効性について述べた.(海津, 2020) また,一般社会への普及ということを念頭に,低地の微地形を理解し,把握することが自然災害リスクを理解する上で重要であることを示し,ハザードマップの利用において地形分類図を併用することの有効性について述べるとともに,一般の人にとって地形や自然災害のリスクを理解する上で地形分類図と起伏の重ね合わせが非常に有効であることを指摘した.(海津, 2020)なお,途上国の例として,タイ国中部の海岸平野における微地形と土地利用変化を衛星画像やDEMデータなどによって把握・検討した(齋藤・海津, 2020).
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