研究課題/領域番号 |
17K01239
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
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研究分担者 |
中村 俊夫 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 招へい教員 (10135387)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テフラ / アレウト / 火山噴火 / 考古遺跡 / 放射性炭素年代 / ウムナック島 / ウナラスカ島 |
研究実績の概要 |
アリューシャン列島の先住民族であるアレウト(Aleut)の最古の遺跡は,フォックス諸島のアナングラ(Anangula)島(Umnak島Nikolski北方)で知られている.彼らはここから西方の島々へ移動・拡散していったと考えられる.アリューシャン列島では,完新世だけに風成堆積物(ローム層や砂丘堆積物)が堆積し,アレウトによる文化層も火山噴火の産物であるテフラと共に埋没している.最古の遺跡もKey Ash とよばれるテフラとの関係で年代が決定されている(Black, 1975)).アナングラ島の東隣のウムナック(Umnak)島には,オクモク(Okmok)火山など完新世に噴火した火山があり,西方のフォー・マウンテンズ諸島(IFM)のクリーブランド(Cleveland)火山など活動的な火山である.本研究では,これらの火山活動がアレウトの移動・拡散にどのようなインパクトを与えたかを明らかにすることを目的としている. アリューシャン博物館のVirginia Hatfield館長らと共にウナラスカ (Unalaska) 島の湿原堆積物やウムナック島南部の二コースキー (Nikolski) 周辺でのテフラ層序を調査した.ウナラスカ島の湿原堆積物では数枚のテフラの挟在が認められた.これらは同島に,最下部から約9200 BPの放射性炭素年代が得られた.この年代値は,ほぼホッグ (Hog) 島(Unalaska湾内)の最古遺跡の年代に近い.すなわち,この付近の火山噴火を含む古環境の復元が可能であることを示すと同時に,堆積物による記録がこの時期に開始されたことも示唆する.今後,なぜこの付近の遺跡がアレウト最古のものなのかを検討する上で重要な知見であると考える.また,ウムナック島南部の二コースキー周辺では,Black (1975) が記載したテフラ層序を確認した.ただし,アレウト最古の遺跡があるホッグ島やアナングラ島での調査がこれまでできていない.その理由は天候不良のため,両島へのアクセスが困難であったためである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウナラスカ (Unalaska) 島やウムナック (Umnak) 島二コースキー (Nikolski) でのテフラ層序調査は,順調に進んでいる.さらにテフラ記載や放射性炭素年代測定を進めることによってより広域の対比を進めることにしている.
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今後の研究の推進方策 |
テフラの広域対比には岩石記載学的特徴が必須であるため,神戸大の佐藤鋭一氏に研究分担者として加わっていただき,この課題の推進を図る.これまで調査ができていないホッグ (Hog) 島(Unalaska湾内)やアナングラ (Anangula) 島(Umnak島Nikolski北方)での調査を2年次である今年度の中心課題とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は,分担者の中村も現地調査に参加するため,その旅費に使用する.
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