本研究は正確な立体地図である「五百沢式鳥瞰図」(地形景観を主題にした科学的鳥瞰図)に、地質図、植生図、地すべり地形分布図等の他の主題図のデータを融合することで、絵画としての美しさを保ちつつ、鳥瞰図が本来内包している豊かな地理、地形景観を表現する科学的な教材を開発するとともに、博物館の展示などでの活用を図るため、詳細な画像データベースを作成することを目的としている。 令和3年度は、新たに見つかった資料200点も含め、作品・実物を1点ごとにリスト化、作品の元になった空中写真、関連する地形図などをファイリングし、資料全体の90%の整理が終了した。またこれらをデジタル画像にする作業を並行して行い、全体の30%の資料についてはデジタル化が終了した。 鳥瞰図と各種主題図の重ね合わせに関しては、東北地方の第四紀火山体(月山など)を描いた鳥瞰図数点について、地形の範囲、視点、高度などを解析し、主題図、特に防災科学技術研究所の5万分の1地すべり地形分布図との重ね合わせができるかどうか検討した。また各地方ごとの地貌図上に地形分類図や水系図を重ね合わせる方法について、東北地方の阿武隈山系を事例に検討した。 これらの成果は、研究代表者が勤務する千葉県立中央博物館のホームページの「デジタルミュージアム」のコンテンツに加える準備を進め、令和4年6月上旬に「山の科学画」というタイトルでアップされる予定である。また令和4年度中央博物館トピックス展「五百沢智也氏が描いた房総の風景」(会期:令和4年4月29日~6月19日)の展示資料として活用されている。
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