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2018 年度 実施状況報告書

人口移動が結婚・出生に及ぼす影響に関する地理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K01241
研究機関早稲田大学

研究代表者

山内 昌和  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (90415828)

研究分担者 江崎 雄治  専修大学, 文学部, 教授 (40282503)
小池 司朗  国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 部長 (80415827)
鎌田 健司  国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 第2室長 (70574200)
中川 雅貴  国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第3室長 (80571736)
余田 翔平  国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 研究員 (70749150)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード出生 / 人口移動 / 結婚 / 個票データ / 地域
研究実績の概要

本研究の目的は、人口移動の影響を考慮した新たな方法論を用いて、日本の低出生率の要因を明らかにすることである。昨年度は、データベース整備とそれらデータを用いた分析の両面から研究を進めた。
データベース整備については、まず人口動態調査や人口移動調査等の個票データの整備を進めた。データ整備は研究メンバーが相互に連携を取りながらも個別に実施した。その際、他のプロジェクトとも共同する形を取ることで、個票データの整備を適宜迅速化した。また、国勢調査や日本人死亡データベースといった集計データについても適宜必要な形での整理を進めた。
データベースを活用した分析については、成果として結実したものを中心に述べる。まず、地方圏の出生数の低迷には若年人口の流出も寄与していることから、都道府県別に5歳階級人口を用いてコーホート変化を集計し、若年人口の残留状況を観察したところ、東日本各県を中心に残留率が低下していることが確認された。次に、人口動態調査と国勢調査のデータを用いて、都道府県別にみた日本人と外国人の自然動態とその影響に関する分析を行い、外国人の人口動態の影響が僅かずつではあるが地域人口に影響を及ぼしていることや、日本人の自然動態が人口変動に及ぼす影響が高まっていることを明らかにした。続いて、将来人口推計を利用して将来の地域別の出生数の見通しについて市町村別に検討し、地方圏の人口規模の小さい市町村で出生数が大幅に減少する可能性を指摘した。さらに、全国レベルではあるが、結婚出生力の変容と社会経済的な背景についても検討した。この他、都道府県間人口移動と初婚の発生についての検討など、人口移動と出生行動との関係についての検討も進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

データベースの整備については、他のプロジェクトとも共同する形を取ることにより適宜迅速化が可能となったため、おおむね順調に整備が進んだ。
データベースを活用した分析については、国際人口移動が出生に及ぼす影響についての検討を優先的に進めたことや、将来の出生数の変動についての検討を進め、一定の成果を得ることができた。しかしその反面、人口移動と結婚、出生との関係についての検討についてはやや遅れも生じている。その要因は、第一に、入管法の改正や将来人口推計の公表といった社会状況の変化を踏まえて上述のような課題を先行的に進めたからである。第二に、データベースの整備に時間を要したことである。この点は既に克服の目処が立っており、今年度に鋭意遅れを取り戻す必要がある。第三に、必要な統計モデルの構築・検討に時間を要したためである。また有配偶出生力のように、既存データでは十分な信頼性を確保できないため、地域別の検討が困難と判断したものもある。このため、統計モデルの検討を鋭意進めるとともに、適切な成果を得られるような方向性の検討も今年度の課題である

今後の研究の推進方策

今後の課題は次の通りである。第1に、個票データのデータベースの構築はある程度終えているが、政府統計の集計データの整備など必要に応じて整理を進めておきたい。
第2に、データを用いた分析を進めることである。分析の具体的課題の1点目は、出生行動と結婚行動の地域差の解明である。個人に想定される結婚のリスクや 出生のリスクに地域差があるのかどうか、もしある とすれば地域間でどの程度の差がみられるのか等の解明が主たる課題である。具体的な課題の2点目は、移動経験の類型化と、類型ごとに結婚や出生のリスクを検討し、リスクに差異があるのかどうか、あるとすればどの程度の差異なのかを検討することである。課題の3点目は、上記の2つの課題を踏まえて、出生行動と結婚行動の地域差における人口移動がどの程度の影響を及ぼしているのかを検討することである。
第3に、地域人口における今後の出生の見通しについて検討することである。当初は、出生率の水準に対する結婚行動・夫婦の出生行動・人口移動の影響を地域別に定量的に評価することを構想していたが、現時点では統計的に安定的な成果を提示することが難しいため、本研究の目的に関連する課題である低出生率の社会的影響についても議論を広げる予定である。
第4に将来人口推計への応用を前提とした地域別の出生率指標の開発や、今後の将来人口における出生数の見通しについての検証を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた計画のうち、データベース作成に際して多くのアルバイト等の利用を予定していたが、実際には各研究が分担して対応している状況であり、 想定していた金額ほどの予算執行とならなかった。今年度に実地調査の予定があることや、研究成果の公表に際しての学会出張の他、各種備品、校閲費等での支出を予定している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] オーストラリアにおける移民の動向と政策2019

    • 著者名/発表者名
      中川雅貴
    • 雑誌名

      統計

      巻: 70 ページ: 26-31

  • [雑誌論文] 期間合計結婚出生率の趨勢とその背景:社会経済発展、ジェンダーレジーム、生殖技術に着目して2018

    • 著者名/発表者名
      余田翔平・岩澤美帆
    • 雑誌名

      人口問題研究

      巻: 74 ページ: 205-223

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 都道府県別にみた外国人の自然動態2018

    • 著者名/発表者名
      中川雅貴・山内昌和・菅桂太・鎌田健司・小池司朗
    • 雑誌名

      人口問題研究

      巻: 74 ページ: 293-319

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 近年における地方圏出身若年者の残留状況:コーホート変化に基づく考察2018

    • 著者名/発表者名
      江崎雄治
    • 雑誌名

      統計

      巻: 69 ページ: 9-14

  • [学会発表] 非大都市圏出生者のUターン移動におけるコーホート間変動と地域性2018

    • 著者名/発表者名
      中川雅貴
    • 学会等名
      日本人口学会第70回大会(明海大)
  • [学会発表] Living Arrangement, Local Care Facilities and Residential Mobility of the Elderly Population in Japan: A Multilevel Analysis2018

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa, Masataka
    • 学会等名
      The 4th Asian Population Association Conference(中国・上海)
    • 国際学会
  • [学会発表] 都道府県別人口の自然増減に対する外国人の影響2018

    • 著者名/発表者名
      山内昌和・中川雅貴・菅桂太・鎌田健司・小池司朗
    • 学会等名
      人文地理学会2018年大会( 奈良大)
  • [学会発表] 出生力と死亡力の地域差が地域別将来推計人口に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      小池司朗・菅桂太・鎌田健司・山内昌和
    • 学会等名
      日本地理学会2018年秋季学術大会(和歌山大)
  • [学会発表] 日本の地域別将来推計人口からみた将来の出生数2018

    • 著者名/発表者名
      小池司朗・菅桂太・鎌田健司・石井太・岩澤美帆・山内昌和
    • 学会等名
      日本人口学会2018年第1回東日本地域部会(札幌市大)

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公開日: 2019-12-27  

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