研究課題
本研究の目的は、人口移動の影響を考慮した新たな方法論を用いて、日本の低出生率の要因を明らかにすることである。最終年度については、整備したデータベースに基づいて分析的に研究を進めた。また研究成果を社会に還元するための取り組みを進めた。分析的な研究では、主として次の3つの分野での検討を進めた。第一に人口移動の傾向についての検討である。東京一極集中が進むとされる中で、非大都市圏出生者のUターン移動が近年の出生コーホートで低下傾向にあることや、その一方で非大都市圏への転入にはIターン移動が無視できない影響をもつこと、日本における外国人の集住などについて検討を行った。第二に、本研究の中心的な課題である移動者の結婚や出生についての検討である。その一つとして、人口移動と初婚を含むライフコースパターンが出生コーホートによってどのように変容したのかを検討し、人口移動経験が結婚確率にどのような影響を及ぼすのかについて検討を進めた。また、東京大都市圏と非東京大都市圏および日本全体の結婚出生力に及ぼす人口移動の影響についても検討を進めた。第三に、日本の中で出生率の高い地域についての人口地理学的な検討である。九州沖縄地方の島嶼部の人口変化についての分析を進めるとともに、結婚出生力が有意に高いために日本の中では例外的に高い出生率を実現している沖縄県を対象として、結婚出生力が本土よりも高くなるメカニズムを検討した。研究成果を社会に還元するための取り組みでは、近年の人口移動と低出生率の影響を考慮した地域別の将来人口について、推計方法の理論的な背景や、推計方法に関連する方法論的な検討、推計結果についての社会的な含意を成果としてまとめ、公表した。また、低出生率が続くことで想定される今後の地域別の出生数の見通しについても検討した。
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