本研究では、金融資産市場を対象として、トレーダーの平均的な認知能力と市場内のトレーダーの認知能力の異質性、および、その異質性をトレーダーが認識するか否かが、ファンダメンタルズからの価格乖離の発生、および、価格変動の性質に与える影響を検証した。分析の結果、異質性をトレーダーが知っている場合でも知らない場合でも、認知能力が低いトレーダーが市場に占める割合と観測される価格乖離の大きさとの間には正の相関があることが示された。さらに、メンタライジング能力(相手の視点で考える能力)の結果と取引パフォーマンスの間には負の相関があるが、認知能力の高いトレーダーに限って言うと、正の相関があることが示された。
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