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2019 年度 実施状況報告書

途中退去のある複数サーバ待ち行列の基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K01244
研究機関群馬大学

研究代表者

河西 憲一  群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (50334131)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード待ち行列理論 / 応用確率過程論 / モデル化 / 性能評価
研究実績の概要

本研究課題では複数の窓口がある待ち行列システムで,客のサービス時関が相型分布に従い,一定の制限時間内にサービスが開始されなければ,客が途中退去するモデルを考察対象とした.ただし,客はクラスに分類されるとし,客のクラス毎に途中退去するまでの一定の制限時間が異なっても良いとした.従来の解析では客の到着過程としてポアソン過程を採用することが多かったが,本研究では相型再生過程やマルコフ型到着過程も扱えることを目指した.

平成31年度(令和元年度)は前年度までに得られた到着過程をポアソン過程とする場合での性能評価指標を算出するアルゴリズムを数値実験を通じて検証し,概ね数値的に安定した結果が得られることを確認した.さらに,到着過程がポアソン過程ではなく,相型再生過程やマルコフ型到着過程に拡張した場合について,先行研究で開発されている流体モデルに変換する方法と,本研究課題でこれまで採用してきた到達待ち時間の確率密度関数を二つの基本解で構成する方法の両方について検討した.流体モデルを基礎とする方法では,トラヒック密度が1に等しい場合は扱えないという制約はあるものの,解析可能であるとの知見を得た.一方,到達待ち時間の確率密度関数を構成する方法では,到着過程を相型再生過程やマルコフ型到着過程に拡張して解析することは困難であることが判明した.その主な原因は,ポアソン過程では成立する行列間の可換性が到着過程を拡張すると成立せず,確率密度関数を構成する二つの基本解を評価することが困難であるためとの結論を得た.しかしながら,流体モデルの方法を手がかりに新たな手法を考案し,同手法の有効性について一定の知見を得ることができ,その一部を公表した.さらに平成31年度(令和元年度)では,これまでの研究成果も踏まえて,無線LANシステムの性能評価への応用を扱った研究成果を得た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成31年度(令和元年度)の当初の計画では途中退去が伴う複数窓口を有する待ち行列モデルの到達待ち時間と性能評価指標を算出する数値計算アルゴリズムについて,数値実験を通じて検証することを目標とした.前年度までに検証作業を進めたこともあり,進捗状況は概ね順調であると判断する.

また,平成31年度(令和元年度)は到着過程をポアソン過程から拡張した場合のアルゴリズムについて検討することも目標とした.検討を進めたところ,従来の手法である流体モデルに変換する方法では,トラヒック密度が1に等しい場合は除くものの,考察対象となる待ち行列モデルが解析可能であるとの知見を得た.なお,例外があることは従来の手法の弱点ではあるが,客のクラス数を十分大きくすることで実際上は回避できるとの知見も得た.一方,到達待ち時間の確率密度関数を構成する方法を,ポアソン過程から拡張した到着過程に適用すると,ポアソン過程では成立する行列間の可換性が一般的に成立しないため解析が困難であることが判明した.しかしながら,確率密度関数を構成する方法が困難となる原因を特定したことにあわせて,従来の手法である流体モデルの解析手法を手がかりに新たな解析手法を考案し,同手法による解析の有効性ついて一定の知見を得ることができた.さらに,新しい考え方に基づいた結果の一部を公表するまでに至った.前年度までに考察対象とした待ち行列モデルを例に数値計算による検証も進めた結果,既存の手法と数値的に一致する結果も得た.以上の結果から,進捗状況は概ね順調であると判断できる.

今後の研究の推進方策

今後は平成31年度(令和元年度)の課題を検討していく中で得た新たな解析手法を中心に,途中退去が伴う複数窓口を有する待ち行列モデルの基礎研究を推進する.新たな手法は,到達待ち時間の確率密度関数の行列指数形式解を拡張した形式で表現することを特徴とする.拡張した表現形式を得るために,到達時間に応じて決まる確率行列を導入し,同確率行列が満足すべき行列についての非線形微分方程式を解析する.新たに導入する確率行列は本手法において中心的な役割を果たすため,まずは非線形微分方程式の解の存在条件や解の一意性など,数理的な基本性質を重点的に解析する.次に,同確率行列を用いた到達待ち時間の確率密度関数の行列指数形式解を数値的に評価するアルゴリズムを検討する.確率行列が定数として与えられる従来の方法とは異なり,新たな手法では確率行列が到達待ち時間の値に依存する.よって,待ち行列モデルの解析で従来から用いられてきた行列指数関数を数値評価する手法は使えない.そこで,他の研究分野(例えば統計物理学など)で知られている手法の活用を中心に検討する.

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画では平成30年度以降において二つのマルチクラス待ち行列モデルを解析する予定であった.二つのモデルのうち比較的簡易なモデルについては成果を学会で発表したが,もう一方のより一般化したモデルについては研究を進めていく過程で当初計画した解析手法では技術的に困難である見通しを得た.新たに代替手法を検討しているが,その有効性を確認するために期間の延長を希望する.繰越金は学会参加の旅費等として有効活用する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] The M/PH/1+D queue with Markov-renewal service interruptions and its application to delayed mobile data offloading2019

    • 著者名/発表者名
      K. Kawanishi and T. Takine
    • 雑誌名

      Performance Evaluation

      巻: 134 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.peva.2019.102002

    • 査読あり
  • [学会発表] 客が途中退去する待ち行列モデルの定常分布の解形式2020

    • 著者名/発表者名
      河西 憲一
    • 学会等名
      日本オペレーションズ・リサーチ学会2020年春季研究発表会

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公開日: 2021-01-27  

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