本研究課題では複数の窓口をもつ待ち行列システムであって,客のサービス時間が相型分布に従い,サービス開始までの待ち時間に制限のあるモデルを研究対象とした.制限時間内に客のサービスが開始されない場合は,システムから途中退去するとした.客を制限時間に応じてクラスに分類し,クラスごとの客について制限時間の値は異なるとした.さらに客の到着過程がポアソン過程から相型再生過程やマルコフ型到着過程に拡張した場合を検討した.
最終年度(令和2年度)では前年度までの研究で得た新たな解析手法に基づき,途中退去がある複数窓口を有する待ち行列モデルの基礎研究を実施した.その結果,同待ち行列モデルを特徴づける到達待ち時間の確率密度関数を,従来の行列指数形式解を自然に拡張した形式で求めることができた.さらには,拡張した行列指数形式解を得るため,到達時間に応じて決まる確率行列が満足すべき行列についての非線形微分方程式を導出し,同方程式の解の存在条件や解の一意性など,数理的な基本性質を重点的に解析した.本研究で得られた解形式を数値評価するために,統計物理学で開発された手法を活用して数値計算アルゴリズムを構築し,数値実験をした.それらの研究成果を日本オペレーションズ・リサーチ学会にて発表した.関連する研究成果を含めて,研究期間全体を通じて国際会議論文2件(査読付き),海外学術論文1件(査読付き),国内学会発表3件,国内研究会1件にて研究成果を発表した.
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