本研究は,非凸な目的関数を持つ離散最適化問題に対して,それに特化させた整数計画アプローチを行うものである.目的関数が非凸な最適化問題は局所最適解が大域的最適解にならないため,また離散最適化問題はその離散的な特性から両方とも本質的に難しい問題である.これらの特徴が合わさった非凸な離散最適化問題はこれまで厳密に最適化することは困難であった.しかし近年,特に機械学習の分野において,非凸な目的関数を持つ離散最適化問題に対する厳密最適化の需要が高まってきていた. 厳密最適化の一つのアプローチとして整数計画法を用いるものがあるが,従来の整数計画法はあくまでも線形の整数計画問題に対するモデリングおよび解法の研究が主体であり,非凸な離散最適化問題に対しては有効でないことが多かった.本研究ではこの点に着目し,整数計画法による非凸な離散最適化問題に特化したモデリング手法やアルゴリズムの研究を行った. 令和元年度の主な研究成果として,目的関数が非線形な二次元曲面で表現される問題に対する整数計画アプローチを行った.この問題は,統計学の順序ロジットモデルにおける特徴選択を扱ったものであり,機械学習アプローチではL1正則化を行いヒューリスティックに解かれていたものである.適切な枚数の接平面近似を行うことにより,ある程度の計算時間で従来のL1正則化より高精度の特徴選択が実現できることを計算機実験で示した. 研究期間全体の成果として,特に機械学習・統計学に現れる非凸な目的関数を持つ複数の離散最適化問題に対して,その特徴を生かした整数計画アプローチの開発に成功した.特に,多重共線性を考慮した特徴選択問題に対しては,制約条件に固有値や逆行列の計算が含まれるため,従来の整数計画アプローチではモデリングができていなかったところ,本研究では自然な形でのモデリングに成功し,計算機実験によってその有用性を示すことができた.
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