研究課題/領域番号 |
17K01248
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中川 秀敏 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30361760)
|
研究分担者 |
足立 高徳 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (60733722)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 金融リスク / Hawkes過程 / 板情報過程 / 高頻度取引 |
研究実績の概要 |
研究代表者の中川は、多次元Hawkes過程を用いたモデル化に関連して、日本企業の倒産履歴データを用いて倒産リスク伝播構造の実証研究について英語論文を国際学会で発表した。また先行して採択された論文が出版に至った。また、本課題に関連して資本制証券プライシングに関する派生的な研究を行い、その研究成果について国内で3件の報告を行うとともに日本語論文を作成して査読論文誌に投稿をした。さらに、業種別の倒産リスク分析の実証研究を行い、英語論文を作成し、査読論文誌に投稿をした。これら派生的研究は錐形ファイナンス・モデルのパラメータ推定法を検討する際に参考になると考える。 もう一つの大きな課題である板情報過程改良モデルに関しては、分析用データ整備の構築および文献調査を中心に行った。またそれに関連して錐形ファイナンスのアプローチに基づく最適ポートフォリオ構築の分析を行い、その結果をワーキングペーパーにまとめることに着手した。 一方、研究分担者の足立は、高頻度取引データを使った約定パターンの研究を引き続き行うとともに、仮想通貨の板情報過程の研究もあわせて行った。具体的には、日本証券取引所が提供している FLEX Full のヒストリカル情報を使って研究を進める準備を行った。高頻度取引に関して、英語の共著論文1編が出版された。また、仮想通貨への応用として,ビットコイン価格の時系列についても研究を行い、英語の共著論文1編が出版され、英語のワーキングペーパー1編を公開した。 また、足立は高頻度取引への応用の観点で板情報力学を含むアルゴリズム取引の理論および一般への啓蒙についてまとめた書籍を1編出版し、これに関する講演も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の中川は、多次元Hawkes過程を用いた実証研究に関する日本語の共著論文1編を出版した。また同内容を発展させた研究を英語論文にまとめ国際会議で発表した。さらに派生的な研究について日本語論文1編と英語論文1編を投稿するに至った。他に錐形ファイナンスの応用について1件ワーキングペーパーにまとめる目処がたっているものがある。さらに、高頻度取引についての多次元Hawkes過程を用いたモデル化と実証についてもアイデアを試行する段階に来ている。 一方、研究分担者の足立は、1日分で10GB程度になる大規模な固定長バイナリ形式データから,板情報を再生するために必要なCSVファイルを取り出すためのライブラリ開発を行い、実装面での準備を整えることができた. また、得られた板情報から機械学習の手法を用いる予備的な実験を引き続き行い、仮想通貨への応用の道も開いた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究代表者の中川は、2019年度内に投稿中の2編の論文の採択を目指す。また錐形ファイナンスの最適ポートフォリオへの応用研究、および高頻度取引についての多次元Hawkes過程を用いたモデル化と実証研究について、本年度前半のうちにワーキングペーパーを作成し、国内外の研究集会で報告するとともに最終的に査読論文誌への投稿を目指す。 一方、研究分担者の足立は、今後開発する大量の板情報データベース(2010年以降の全東証銘柄)を使って,ビッド・アスクの高頻度なマイクロ・ダイナミクスを、錐形ファイナンスの視点から分析する予定である。その過程では、これまでの予備実験の結果から応用可能性が高いと考えられる機械学習の手法を応用することを考えている。 年度末には、本課題の最終成果報告のためのワークショップを開催する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究代表者の中川の国際会議の出張費用が想定よりも低かった。ただし、その余剰分を年度内に使いきるよりも、最終年度に作成予定の英語論文の英文校正費用に余裕を持たせることが妥当と考えたため。 (使用計画)最終年度に作成予定の英語論文の英文校正費用に充てる予定である。
|