研究課題/領域番号 |
17K01251
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
関谷 和之 静岡大学, 工学部, 教授 (60256667)
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研究分担者 |
山本 芳嗣 静岡大学, 工学部, 客員教授 (00119033)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経営効率性分析 / 多面的評価 / 動的DEA |
研究実績の概要 |
生産年齢人口の減少が著しい日本では,生産における組織活動の効率化は喫緊の課題であり,超スマート社会では,組織活動の効率性測定は必須のデータ解析技術である.今年度の研究は単一工程における改善目標を考慮した経営効率性分析(DEA)の質保証の検証と2段階工程におけるDEAモデルの開発に取り組んだ.さらに,開発した2段階DEAモデルをグループ作業に対する業績評価で実践した。 具体的には,低次元の最短距離DEAによる非効率性尺度は単調性を保証することを明らかにした.論文として, European Journal of Operational Research に掲載された.この成果は単一工程にだけ有効であるので,2段階工程への拡張を試みた.2段階DEAでは中間財が存在し,それは単一工程には存在しない.2段階DEAモデルによる効率性尺度における中間財の取り扱いに関して,既存の文献調査を実施した.さらに,グループ作業に対する業績評価を2段階DEAとしてモデル化に取り組み,ゲーム理論のアプローチによる2段階DEAモデルが相応しいこと,そして,中間財が生産可能性において出力の性質を有することがわかった. しかし,既存研究のゲーム理論のアプローチによる2段階DEAモデルは必ずしも最適値が存在しないことがわかった.この事実とその対策をまとめた論文は,日本オペレーションズ・リサーチ学会の機関誌に掲載(5月号予定)されることになった.さらに,その対策は多段階DEAにも有効である.多段階DEAの特殊形が動的DEAであるので,本対策は動的DEAでも有効である. 中間財の生産調整が非効率値に有効であることが知られているが,この有効性はグループ作業に対する業績評価において,戦略的操作を引き起こす誘因であることがわかった.この問題点に注目して,次年度以降は戦略的操作を許さない2段階DEAを開発することとする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生産可能性における出力的性質を有する中間財を抱える2段階DEAモデルでは,その効率性尺度が中間財に対する単調性は理論と実践の両面で注目すべき点であることは,研究申請当初に抱えていた問題意識には無く,新たな気付きであった.さらに,効率性尺度において,出力的性質を有する中間財に対する単調性を保証される2段階DEAの開発は,研究代表者の既存研究 Least distance based inefficiency measures on the Pareto-efficient frontier in DEA K Ando, A Kai, Y Maeda, K Sekitani,Journal of the Operations Research Society of Japan 55 (1), 73-91 のアイデアが有効である見通しが立っている.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が取り組んできた最短距離DEAの研究成果と2段階DEAモデル開発に導入する方針で理論研究を進めていく.一方で,グループ作業に対する業績評価の実践を通して,開発した2段階DEAの実効性を実証する予定である.本研究方針の下で注意すべき点は,研究代表者が2018年4月から転職したことにより,新しい研究環境の整備とグループ作業に対する業績評価の実践に立ち会うことは物理的に困難になることが不安点である. さらに,新しい研究環境では,従来の研究環境で利用できていたソフトウェアが利用できなくなる可能性もある.今年度は計画していた支出を意図的に抑制することで,翌年度以降の新研究環境の整備費に充当することとした.また,翌年の実践での準備のために,翌年4月から6月には,新職場と現職場との出張を定期的に実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年4月から職場を静岡大学から東京理科大学に異動することが年度途中で確定した.そのため,静岡大学に寄付した研究資料や設備および静岡大学で構築した計算開発環境を東京理科大学に移転することが全て可能であることは年度途中では不明であった. 本研究テーマを次年度以降も円滑に遂行するために,当該年度の使用予定を次年度以降に回すことで対応した.特に計算開発環境の構築のためには,最適化ソフト購入は不可欠であり,近年性能は飛躍的に向上しているが,その分,価格は高騰している.その購入予定ために,今年度の支出を抑制して,翌年予算を回した.さらに,現職場で翌年度実施する実践準備のために,新職場と旧職場の出張を4月,5月,6月に定期的に実施する予定である.この出張費用充当のために,今年度予算の支出抑制をした.
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