研究課題/領域番号 |
17K01254
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西原 理 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (20456940)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ファイナンス / 金融工学 |
研究実績の概要 |
企業活動の理論について以前は静学的モデルで分析されてきたが、近年では動学的な確率モデルによる分析が主流になりつつある。本研究プロジェクトでは、 (I)ベンチャー、(II)事業拡大、(III)事業縮小という3段階における企業活動を動学的な確率モデルに定式化して分析してきた。研究実績書の後半に記載したように、今年度には、既に2本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載されている。 Shibata, Nishihara (2018, Journal of Corporate Finance) では、(II)事業拡大と(III)事業縮小の段階の企業の分析を行った。企業の投資費用の一部が清算価値として残存する(投資の部分的可逆性)と仮定し、この残余価値から決まる負債の上限発行額を考えることによって、投資の部分的可逆性と資金制約が投資と倒産プロセスに及ぼす影響を明らかにした。 Nishihara (2018, Managerial and Decision Economics) では、(I)ベンチャー,(II)事業拡大の段階の企業のR&D投資の分析を行った。技術的要因の不確実性、市場需要の不確実性、他社との競合状況の不確実性を考慮したうえで、計算可能なR&D投資プロジェクト評価モデルを開発して、多くの含意を得ることができた。 これら以外にも複数の論文が、ジャーナルで印刷中になっていたり、ジャーナルに投稿されたりしている。特に、投稿中の論文には、研究協力者であるZhang助教授(William Paterson University)、Sarkar教授(McMaster University)等との国際共著論文もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(I)ベンチャー、(II)事業拡大、(III)事業縮小という3段階における企業活動を動学的な確率モデルに定式化して分析するという研究を進めており、研究成果については、順調に論文として現れてきている。実際、今年度には、既に2本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載された。そのほかにも、3本の論文が国際的な査読付きジャーナルで印刷中であり、3本の論文が、国際的な査読付きジャーナルに投稿され審査中である。リジェクトされて発表できなかった国際学会もいくつかあるが、多くの国際学会に参加して、可能な限り、研究発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本研究プロジェクトは、順調に進展しているので、基本的には、現在の研究を継続、発展させていきたいと考えている。論文を国際的にトップレベルの査読付きジャーナルに掲載するためには、そこに投稿する前に、重要な国際学会で発表して、参加者の反応やフィードバックを生かして、論文を改善していくことが不可欠であると考えている。このためにも、次年度以降は、より積極的に、国際学会に参加していきたい。 本研究プロジェクトでは、一部の研究を、研究協力者である芝田教授(首都大学東京)、Zhang助教授(William Paterson University)、Sarkar教授(McMaster University)、Jeon助教(大阪大学)等との共同研究という形で行っている。これまで以上に、研究協力者ともしっかり連携を保って、進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究発表を予定していた複数の国際学会からリジェクトされたため、国際学会参加のために予定していた旅費の使用ができずに、次年度使用額が生じてしまった。 次年度以降、積極的に、国際学会に参加して、多額の旅費を使用する予定であり、旅費の内訳は変わらない。世界最高レベルの研究発表が行われる重要な学会(例えば、American Finance Association Annual Meeting, European Finance Association Annual Meeting, Financial Management Association Annual Meeting 等)の場合には、リジェクトされたりして自分の研究発表ができなくても、積極的に参加して、最先端の研究情報をキャッチアップしていきたいと考えている。
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