研究実績の概要 |
企業活動の理論について以前は静学的モデルで分析されてきたが、近年では動学的な確率モデルによる分析が主流になりつつある。本研究では、 ベンチャー、事業拡大、事業縮小という3段階における企業活動を確率的・動学的なモデルに定式化して分析した。研究実績書の後半に記載したように、今年度は、4本の論文が国際的な査読付きジャーナルに掲載された。 Nishihara, Shibata (2019, Journal of Economic Dynamics and Control) では、事業縮小の段階の企業の資産売却・倒産問題を分析した。資産の買収側の企業の査定が売却側に分からないという情報の非対称性の影響を解明した。売り手企業は、売却タイミングを遅らせることで安値での売却を防ごうとするが、このスクリーニングコストが高いときには、資産売却が行われずに倒産することを示した。この倒産では、資産の安値での売却(投げ売り)が生じ、買い手企業が利益を得ることも示した。この結果によって、倒産企業の資産の投げ売りに関する多くの実証結果が説明できた。 Nishihara, Sarkar, Zhang (2019, Journal of Business Finance and Accounting)、Jiao, Nishihara, Zhang (2019, Journal of Financial Research)では、事業拡大の段階の企業の既存負債が引き起こす過少投資問題を分析し、Shibata, Nishihara (2019, International Journal of Theoretical and Applied Finance)では、ベンチャー、事業拡大の段階の企業の資金調達・投資問題を分析し、多くの経済的含意を得ることができた。
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