研究課題/領域番号 |
17K01255
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大西 匡光 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10160566)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 確率制御 / 確率ゲーム / ファイナンス / 金融工学 / 流動性リスク / 価格インパクト / 執行問題 |
研究実績の概要 |
平成30年度も,平成29年度と同様,先端確率制御理論のファイナンス・金融工学への革新的応用をテーマとする学内外の研究者が集う研究会を,原則,毎週1回大阪大学豊中キャンパスにおいて開催した.その結果,現在多くの関係研究者・実務家からの関心を集めている現代的諸問題のうち,とりわけ,市場の流動性リスクを考慮した上での,金融資産ポートフォリオの取引執行問題,価格付け・ヘッジング,等に関する最新の研究状況を概観できたことは有益であった. 申請者自身の研究面では,従来から行っていた,離散時間の設定での金融資産の市場価格インパクト・モデルを一般化・精緻化した上での,単一のラージ・トレーダーによる金融資産の最適動的執行問題については,満足のいく結果を得ることに成功した.また,平成29年度の後半に着手した,前述の問題を特別な場合として含む,複数のラージ・トレーダーによる金融資産の取引執行についての確率ゲーム・モデルにおける均衡執行戦略の分析に関する研究に対しても,期待以上の興味深い結果を得ることができた. これらの研究成果については,国内外での関連する国際会議,学会,研究集会,等において報告する機会をできる限り多く持った結果,他の研究者からの評価はおおむね良く,また今後の研究を展開するに当たっての貴重な意見,アトバイス,等をも得ることができた. 平成30年度の後半には,これまで扱った離散時間モデルの連続時間移行と位置付けられるモデルにも取りかかり,単一のラージ・トレーダーによる最適執行問題については,離散時間モデルにおけるのに対応する結果を導出することができる感触を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
離散時間の設定での,単一のラージ・トレーダーによる金融資産の最適動的執行問題については,ほぼ満足のいく結果を得ることに成功した. また,この問題を特別な場合として含む,複数のラージ・トレーダーによる金融資産の執行についての確率ゲーム・モデルについても,期待以上の興味深い結果を得ることができた. さらに,これら離散時間モデルの連続時間移行と位置付けられるモデルにも取りかかり,単一のラージ・トレーダーによる最適執行問題については,離散時間モデルにおけるのに対応する結果を導出することができる感触を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
着手したばかりの連続時間モデルにおける,単一のラージ・トレーダーによる最適執行問題について,さらに分析を進めることが当面の課題である. また,連続時間モデルにおける,複数のラージ・トレーダーによる金融資産の取引執行についての確率(微分)ゲーム・モデルとしての定式化と均衡分析については,さらなる大きな課題として残されている. さらに,単一のラージ・トレーダーによる金融資産の最適動的執行問題についても,金融資産の市場価格インパクトの残留効果,あるいはファンダメンタル・バリューが不完全にしか観測できない場合への拡張,といった理論的に高度な問題への拡張も残されている. 平成31年度は本プロジェクトの最終年度であるので,海外の研究者が多く集う国際会議,等での研究成果の発表についても積極的に行って行きたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度中に出版予定であった文献の購入のために予算の支出を留保していたところ,その出版が遅れたため,その一部が平成31年度(令和元年度)に繰り越されることとなった.
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