金融市場における売買取引き執行問題に関して,離散時間,および連続時間のいずれに対しても,一般化された市場価格インパクト・モデルを新たに提案した上で,単一の大きなトレーダーによる取引き執行の最適化問題,および複数の大きなトレーダーによってなされる取引き執行ゲームのそれぞれに対して,確率動的計画法[Markov決定過程,離散時間確率制御理論],確率ゲーム理論[Markovゲーム理論]を適用して,問題を定式化して分析を進め,それぞれ最適取引き執行戦略,均衡取引き執行戦略を特徴付け,導出した.さらに数値計算実験を重ねて,これまでには得られていなかった興味深い比較静学の計算結果を得ることができた. さらに,最終年度においては,(I)上記の離散時間モデルを,一般化して,1次元高いMarkov過程で描写し,(II)対応する連続時間モデルを構築・提案して,(I),(II)の両方に対して,単一の大きなトレーダーによる取引き執行戦略の最適化問題を,(I) に対しては確率動的計画法[Markov決定過程,離散時間確率制御理論]を用いて定式化した上で問題の最適性方程式を導いて,その解となる最適値関数の構造を吟味することで,他方 (II) に対しては確率連続制御理論を用いて定式化した上で,問題の Hamilton-Jacobi-Bellman (HJB) 方程式を導いて,その解となる最適値関数の構造を吟味することで,最適取引き執行戦略が(1次元高い)状態のアフィン[線形]関数になることを示すことに成功した.
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