研究課題/領域番号 |
17K01260
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
梶原 康博 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (70224409)
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研究分担者 |
新里 隆 玉川大学, 工学部, 准教授 (70574614)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 作業分析 / 屋内測位方法 |
研究実績の概要 |
平成29年度当初計画に従い、RFID技術を用いて人と物の位置を0.3m以内となる測定精度で連続して測定できる方法を開発した。具体的には、RFIDを用いた屋内位置推定において、マルチパスによる位置推定精度への影響を低減する方法を提案した。測位対象に複数のタグを取り付けることにより、常に一つ以上のタグが検知されるようにした。測位対象の位置を変え、タグの読取試行回数と読取成功回数の比で表される読取率を測定し、読取率を入力データ、測位対象の位置を出力データとするデータセットを作成した。次に、このデータセットを用い、汎化誤差を指標にして入力データから測位対象の位置推定モデルを求めた。適用例において、静止対象の位置推定誤差の最大値が1.0m以内となること、測位対象に0.8mの高低差があれば、すべての測定点で正しく測位対象の高低を推定できる基盤が実現することが示された。さらに、移動対象の動線測定では、位置推定誤差の最大値が0.5m以下となることが示された。 また、作業効率化の観点から、当初予定には含まれていなかったが、従業員の職務満足と継続就業意思の経年変化とその因果関係について分析を行った。新興国における生産拠点において複数年にわたり実施された職務満足向上対策を事例として用い、職務満足要因から継続就業意思への影響を分析した。継続就業意思に関しては会社への継続就業意思,今の仕事への継続就業意思および今の仕事に対する意欲からなる3項目を設定し、職務満足要因として29項目を設定した。調査データのクロス集計から、年度により継続就業意思に有意差のあることが示された。年度別に職務満足要因から継続就業意思への影響を共分散構造分析により分析した結果、すべての年度で継続就業意思への影響が有意な職務満足要因と、年度により影響の有無が変わる要因のあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の当初に計画したRFIDを用いた屋内測位方法を開発した。実機を用いて位置推定精度を検証した結果、作業分析に必要となる測定精度が達成されていることが確認された。当該装置の運用試験を協力企業の中国工場で行うことを予定したが、企業側担当者の病気により、中国工場での運用試験を2018年度に延期することとなった。実験室で行われた研究成果に関しては、学術論文誌に投稿し、採択された。また、作業分析の目的が生産性向上であることから、当初予定にはなかったが、生産性向上に影響を及ぼす要因の一つと考えられている熟練作業者の離職に影響を及ぼしている要因を明らかにする研究を実施した。以上のとおり、方法の開発に関しては計画通りに研究成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、当初計画に従い加速度センサーを用いた動作分析方法を開発する。生産現場では、作業場所ごとに作業内容が決められていること、および通路では歩行が中心であり立ち止まって作業が行われることがほとんどないことから、動作分析のための追加情報として、位置情報も用いて動作を分析できる方法を開発する。位置情報を取得する方法としては、平成29年度に開発したRFID装置を用いた屋内測位方法を利用することができる。しかし、RFID装置は高額であることから、社会への波及効果の観点からより安価な屋内測位方法を用いる必要がある。そこで、新たに超音波を用いて作業者の位置をリアルタイムに測定する方法を用いることも検討する。予備実験では、超音波を用いた位置測定では、誤差3㎝以内の測定精度が実現されることを確認している。以上の位置および加速度情報を用いて作業者の動作を自動で分析できる方法を予定通り平成30年度に開発する。開発する方法の有効性を確認するために、国内の複数の物流事業所から当該方法の運用試験を実施することの承諾を得ている。以上の進捗状況を鑑み、平成30年度は交付申請書に記載した計画通りに研究を推進できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
作業分析装置の運用試験のために日系企業の中国工場に行くための旅費を当初予定していた。しかし、企業側担当者が病気になり手術および長期療養が必要となったために、中国工場との日程調整が困難となり、運用試験の実施計画を詳細に詰めることができず、中国工場での運用試験を2018年度に繰り越こすこととになった。そのため、旅費に未執行分が生じた。企業側担当者は年度末までに職場に復帰したことから、2018年度に作業分析装置の運用試験を中国工場にて実施することが可能となった。また、製造現場での装置の運用試験を実施できなかったことから、論文投稿が計画よりも遅れたため、論文掲載料が計画通りに執行できなかった。2018年度は、装置運用試験を当初計画の内容で実施する予定であることから、論文掲載料の執行ができると考えている。
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