研究課題/領域番号 |
17K01267
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
池田 欽一 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (10334880)
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研究分担者 |
林田 実 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 深層学習 / CNNモデル / 株価市場 |
研究実績の概要 |
今年度は、金融市場の中でも株式市場に的を絞って深層学習の適用可能性の検証を目標とし、データ収集、分析モデルの構築、これまでの研究で開発してきた既存シミュレーションシステムのモデルに合わせた改変、およびシミュレーションによる検証を中心に進めてきた。 具体的には、取引ごと、および、1分ごと(1分足)の個別銘柄の株価、1日ごと(日足)の様々な市場関連情報を収集データとして準備し、株式市場の予測対象として、複数のモデルを取り扱った。 1つめのモデルとしては、1分ごと(1分足)の取引価格情報の始値、終値、高値、安値、およびそれらを加工した個別銘柄の価格情報時系列をネットワーク入力とし、時系列の数値をそのまま入力したケースと2次元画像へ加工したケースでの1分先、3分先の株価の変動(上下)の予測結果についてケースごとに比較し、予測率は最も良い結果で55%ほどであったが、画像化したケースの方が安定的にランダムな予測の50%を超えることが確認できた。2つ目のモデルでは個別銘柄の日足の価格情報、日経平均株価、業界平均株価、ダウ平均、金利など様々な市場関連情報を入力するモデルについて分析を進めている。このモデルでは現在のところ時系列をそのまま入力とするケースのみ実施しているが、今後これら情報の画像化方法について検証を進めることとしている。 各モデルについてはそれぞれシステム構成、およびネットワークに用いるユニット数、学習定数など様々なパラメータを調整する必要があるが、経済、金融データは自然現象や物理現象と違い、サンプル数が比較的少なかったり、ノイズを含んでいたりという傾向があるため、経済、金融データを扱う際の適切な設定方法についても検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、当初の初年度の計画の通り進んでいると考えられる。ただし、シミュレーションシステムにおいてGPUを用いた並列計算への改修に時間がかかり、現在までの研究成果の論文化までは進まず、研究報告3件のみとなっているため、おおむね順調という自己評価結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のシミュレーション実験の結果、数値時系列をそのまま用いるフィードフォワードネットワークよりも、画像データを入力とするCNNモデルを持ちいた方が予測結果がよい傾向があるため、今後は複数時系列データを適切に画像化する手法の開発していく予定である。複数時系列の効率的な画像化手法が得られれば、研究実績の概要に記載の2つ目のモデルのように関連した多数の情報による予測が可能となるため、より効果的な予測が行えると考えられる。 また、投資家の心理的な側面をとらえるためには、より詳しい情報を用いた分析が必要となってくるが、株式の取引ごとにデータを記録したティックデータを用いたモデルについても利用可能性について検証を進める予定である。ただし、ティックデータは1日に数万件と多数のサンプルであるので、ネットワーク学習の計算量が膨大となるため、効率的な手法を研究するとともに、シミュレーションシステムの改修も必要となってくる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者(池田)は必要な機材購入等で計画通り支出しているが、研究分担者(林田)は今年度のデータ分析は既存PCで実施可能であったため次年度使用額が生じた。次年度以降PCの更新時期を迎えるので、その際に、科研費の残額を投入して、最新のPCを購入する予定にしている。
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