研究課題/領域番号 |
17K01268
|
研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
片山 直登 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (20194780)
|
研究分担者 |
百合本 茂 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (90129015)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 循環型ネットワーク / サプライチェーンネットワークモデル / 最適化モデル / ネットワーク設計 / 近傍探索法 |
研究実績の概要 |
循環型サプライチェーンネットワーク設計モデルの高速解法のためのアルゴリズムを確立し,このアルゴリズムに基づいた複数のネットワーク設計モデルに対する解法と解析システムを開発した.開発したアルゴリズムは,容量スケーリング法,列・行生成法と新提案のMIP近傍探索法をもとにしている. 容量スケーリング法は,デザイン変数に対する線形緩和問題を解き,そのデザイン変数解の値とスケーリングパラメータに従ってアーク容量を変化させ,0または1のデザイン変数解を導出するものである.強制制約式を含めた定式化と列・行生成法を組み合わせると,ネットワーク設計モデルに対して有効に機能する. 暫定解の改善方法として局所分枝法が知られており,ネットワーク設計問題では他の解法と組み合わせて適用され,高精度な解を提供している.この解法では領域分割と分枝操作が必要となり,複雑な手続きが発生する.本研究で提案したMIP近傍探索法は,暫定解から少なくとも1本のアークを取り除く制約,暫定解から高々M本のアークを取り除く制約,目的関数が暫定値以下となる制約の3制約を付加し,この制約付き組合せ最適化問題を所定の時間内で解くことを繰り返すものである.なお,実行可能解が得られない場合は,Mを減少させる.この近傍探索法は手続きが単純であり,得られる解は単調減少であり,短時間で収束解を算出することができる. 大規模問題に対しては強制制約式を含めた定式化に対する容量スケーリング法と列・行生成法に膨大な計算時間がかかることから,容量スケーリングの繰り返し時の列生成回数の制限と,容量スケーリングの繰り返し後に0に収束したアークを削除することによる問題の逐次縮小化を提案した. 基本となる8種類のネットワーク設計モデルに対して,上記のアルゴリズムを用いた解析システムを開発して,数値実験を行い,解法とシステムと解析システムを評価した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
循環型サプライチェーンネットワーク設計モデルのための高速解法のアイデアを確立した.提案したアイデアをもとにアルゴリズムを開発し,基本的な8種類のネットワーク設計モデルに対する高精度の高速解法と解析システムを開発することができた.計算実験の結果から,従来の最良解法より優れた解を算出することができる,または解が同等の場合は計算時間を大幅に短縮できることが明らかになった.以下に,得られた主な結果を示す. 容量制約をもつ設計モデルに対する数値実験では,従来の最良解法である容量スケーリング・局所分枝法の平均誤差は0.19%,提案法の誤差は0.19%であり,従来法の平均計算時間は6728秒,提案法の時間は331秒と大幅な短縮に成功した.大規模な容量制約をもつモデルに対する数値実験では,並列局所探索法の平均誤差は16.4%,提案法の誤差は14.0%と改善に成功し,従来法の平均計算時間は3600秒,提案法の時間は15306秒であったが,従来法は96CPUをもつ並列コンピュータ上で計算を行ったものである.アセットバランス条件を考慮した設計モデルに対する数値実験では,容量スケーリング・局所分枝法の平均誤差は0.33%,提案法の誤差は0.45%であったが,従来法の平均計算時間は8637秒,提案法の時間は240秒と大幅な短縮に成功した.非分割フロー・アセットバランス条件を考慮した設計モデルに対する数値実験では,近傍探索緩和法の平均誤差は2.61%,提案法の誤差は1.09%と大幅に改善し,従来法の平均計算時間は426秒,提案法の時間は436秒であった.非分割フローモデルに対する数値実験では,容量スケーリング・経路再結合法の平均誤差は0.78%,提案法の誤差は0.80%であり,従来法の平均計算時間は14503秒,提案法の時間は435秒と大幅な短縮に成功した.
|
今後の研究の推進方策 |
容量制約をもつ設計モデル,大規模な容量制約をもつ設計モデル,非分割フロー条件を考慮した設計モデル,アセットバランス条件を考慮した設計モデル,アセットバランス条件と非分割フロー条件を考慮した設計モデル,ホップ数条件を考慮した設計モデル,非分割フロー条件とホップ数条件を考慮した設計モデル,区分的線形費用をもつ設計モデルの計9モデルに対する解析システムを開発し,ベンチマーク問題を用いてシステムを評価し,大きな成果を挙げることができた.提案した解法では,複数のパラメータが解の精度に大きな影響を与えている.しかし,使用しているコンピュータの台数および処理能力の制約のため,パラメータチューニングが不十分であった.このため,2018年度前半はコンピュータを増設し,十分なパラメータチューニングを実施する. 基本的な複数のモデルへの解法の適用結果から,幅広いネットワーク設計モデルに対して短い計算時間で精度が高い解を算出できることが明らかになった.2018年度後半は,これらの基本モデルを循環型モデルに拡張する.従来の基本モデルは多品種流を考慮した任意のODを含むモデルであるため,リバースフローを直接的に考慮することができる.しかしながら,製品の組立てなどのフローの合流,廃棄・処分などのフローの減少,分解などによるフローの分離などは考慮できていない.そこで,これらの複雑なフロー処理を従来型のネットワーク設計モデルに組み込んだ循環型サプライチェーンネットワーク設計モデルを開発する.また,2018年度は,前年度に得た多くの研究成果を国際論文誌に投稿する. 2019年度は,2018年度に得られた知見をもとに,循環型サプライチェーンネットワーク設計モデルの解法を開発する.
|