研究課題/領域番号 |
17K01271
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小林 和博 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 講師 (00450677)
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研究分担者 |
田中 未来 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 助教 (40737053)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数理最適化 / ロジスティクス / 船舶海洋工学 / 高性能計算 |
研究実績の概要 |
近年,環境負荷が小さくかつ効率的な海上輸送を実現するための取り組みが進められている.環境負荷を低減するための方策は,大きくハードウェア(エンジンなど)の改良によるものとソフトウェアの改良によるものがある.ソフトウェアの改良によるもので有効なものとして,船舶スケジューリングと航路計画の改良か挙げられる.これらは従来別々に行われるものであったが,本研究では,これらを融合することによって,より大きな効果が得られるモデル・アルゴリズムを開発することを目的としている. 減速運航は,燃料消費量の削減のために有効な方策として認識されているが,それを実現するには,貨物を積み日,おろす日,荷量の変化,気象海象の変化など計画に迅速・的確に反映する必要がある.ここで開発したモデルとアルゴリズムは,この目的を実現するための最適化計算を実現する重要なものである. このような運航計画を求めるために有効なモデルとして,運航計画の2港間の移動コストを船速の大きさによって変化する燃料消費量として定義した航路計画モデルを開発した.これにより,運航上の制約を満たしつつ減速運航が可能となる計画を得ることができる.このモデルから計画を求めるためには大量の計算が必要であるが,その計算を実用的な時間内に行うためのアルゴリズムを開発した. また,船舶スケジューリングと統合するための準備として,列生成過程のアルゴリズムの設計を行った.これにより,緩和問題を用いることで,収束までの計算を効果的に行うことが期待できる. さら,実際の航路ネットワークのうちで,どの地域や港湾に注目するべきかを明らかにするために,国内外の港湾の貨物取扱量や施設を調査し,経済的な観点からの分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度取り組んだ航路計画のモデルの拡張は,次年度以降の融合モデルの開発の基礎となるものであるが,効率的なアルゴリズムの開発により,現実的な計算時間で解が求まることが期待される.また,予備的な解析結果により,日本近海の海象データをうまく用いることで燃料消費量の削減が期待できる可能性を見出している.これらのことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,航路計画モデルを解くためのアルゴリズムの改良に取り組み,計算時間をより短縮する方法を追求するとともに,このモデルを船舶スケジューリングモデルと融合するための具体的なモデルの開発に取り組む.また,開発モデルの性能を評価するために,当該分野で使用されているベンチマーク問題のフォーマットを拡張する.さらに,航路計画・船舶スケジューリングモデルと補完的な位置付けにある,船隊構成決定・航路ネットワーク選定手法と相互に及ぼす影響の解析も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた費用のうち,次年度使用額とする主なものは,物品費,旅費とその他である。物品費は数理最適化ソフトウェアの購入のために用いる予定であったが,今年度のアルゴリズムの改良結果により,購入するべきソフトウェアの種類を再検討することが妥当だと判断した.次年度以降,アルゴリズム改良の進捗状況をみつつ,適当なソフトウェアの選定を行いたい.また,旅費とその他の費用は,国内学会における研究成果発表旅費とその参加料を想定していたが,学会発表ではなく研究成果を学術論文として投稿することが妥当だと判断した.そのため,次年度以降にその投稿の準備のために使用する予定である.
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