研究課題/領域番号 |
17K01273
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
井上 全人 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60365468)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 設計工学 / 環境配慮設計 / アップグレード設計 / ライフサイクルエンジニアリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本のMOTTAINAI精神を具現化し,企業および消費者の環境意識と環境配慮行動を共に促進するこれまでに例のない新しい製品ライフサイクル設計支援システムを構築する。そのために,以下の3つのPhaseに分けて研究を遂行する予定である。 (Phase1)MOTTAINAIを具現化する製品ビジネスモデルの提案,(Phase2)企業に対してアップグレード製品を展開する指針を提示するシステムの開発,(Phase3)Phase1およびPhase2により構築したシステムの事例適用による検証 2017年度は,(Phase1)のうち,MOTTAINAIを具現化する製品ビジネスモデルの想定を行い,企業の持続性を考慮したアップグレード設計手法の実現のため,製品のコスト要因や,ビジネスモデルの種類を把握し,それぞれのビジネスモデルに合わせて適切な設計解を導く手法を考案した。本研究では,以下の3つの製品ビジネスモデルを想定し,それぞれに合わせたアップグレード製品やサービスの設計手法の進め方を提案した。 ① 製品を販売し,必要があれば初期不良や故障に対する補償を行う場合:消費者は初めに製品代金を支払い,必要に応じて修理料金などの保守料を支払う。② 複合機のように製品を保守付きで販売する場合:消費者は製品代金と月々の保守料を支払う。③ 製品をリースする場合:消費者は月賦または年賦のリース料(保守料を含む)を支払う。 また,上記の①のビジネスモデルを想定し,(Phase3)の事例適用を行い,ノートパソコンのアップグレード設計へ適用した。さらに,本研究を含む日独での共同研究の取り組みが評価され、Deutsche Gesellschaft der JSPS-Stipendiaten e.V.にて,JSPS Alumni Club Awardを受賞した(フランクフルト,2018年4月21日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,(Phase1)MOTTAINAIを具現化する製品ビジネスモデルの提案,(Phase2)企業に対してアップグレード製品を展開する指針を提示するシステムの開発,(Phase3)Phase1およびPhase2により構築したシステムの事例適用による検証のうち,2017年度は(Phase1)のみを実施する予定であったが,提案手法の有効性を検証するために,(Phase3)まで実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に提案したそれぞれのビジネスモデルにおいて,製造企業の持続性を実現するために,2018年度は,以下の事項を検討する。各々の適切な値,関係を同時に考慮可能なセットベース設計の概念を用いて,不確実な設計情報を範囲値で表現し,範囲を有する設計解を導出する。 ① 製品の販売予定台数およびアップグレード率 ② 製品および部品の製造,管理および廃棄コスト(ライフサイクルコスト) ③ 製品,構成部品に与える利益(率),低環境負荷,低価格,高利益を最大限実現するアップグレード時期 本研究ではビジネスモデル毎にアップグレード率等の想定するべき変数を示し,設計の初期段階で製造企業がアップグレード製品を展開する指針を提示する。また,アップグレード製品をより高品質,高利益,低価格なものにするために,製品の寿命や,アップグレードによる製品品質の変化を考慮し,信頼性設計やロバスト設計の考え方をアップグレード設計に適用して,アップグレード性,信頼性,ロバスト性を考慮した今までにない新しい設計手法の提案を行い,計算機に実装することでシステムの開発を行う。 製品の機能と属性(部品等)の関係性を表現するために,マルチドメインシミュレーションソフトウェアを導入し,設計者が製品の構成と各部品のライフサイクルオプションを入力することで,適切な情報(アップグレード率,コスト,環境負荷,価格,利益等)を導出する製品ライフサイクル設計支援システムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 計画段階で購入予定だったLCA用計算機について,前年度に購入した計算機を活用することができ,予定金額よりもさくげんできたため。 一方,当初予定よりも成果発表を行うことができたため,旅費の支出が計画よりも多くなったが,上記の削減効果により,最終的に計画よりも少ない支出で研究をじっこうできた。 (使用計画) 本年度は,国際会議での研究成果発表,招待講演,および海外調査・研究打ち合わせを予定しているため,海外旅費として使用する。
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