研究実績の概要 |
本研究では,IT技術者の予備軍である情報系大学生を対象に,現実逃避利用に陥りがちな「テクノ・ネット依存症傾向」が「新型うつ傾向」を悪化させ,相互に励ましあう共感的ネット利用が精神的回復力を意味する「レジリエンス」を高めて,それが新型うつ傾向を抑制するいう仮説を検証し,主としてネット利用に伴う新型うつ傾向悪化の予防策を分析・提案する。 上記仮説は,新たな縦断調査データの分析で検証済みで,その報告はH30年度に行う予定である。H29年度は,その事前関連研究として共感的ネット利用を促進すると考えられる活力喚起型動画視聴(以降,活力型動画視聴)のレジリエンスへの向上効果を検証した。 その掲載済み査読付き論文の概要を以下に示す。 活力型動画視聴とは,「精神的な活力を得ることの出来る特定の動画視聴」を意味し,その主観的頻度を分析に用いた。この調査では,レジリエンスという心の強さやQOLのような主観的な項目への影響度を分析することから,客観的回数や時間よりも,動画の印象に残っている回数を重視し主観的頻度を適用した。ここでの動画視聴の対象は,ネット,映画,テレビ,各種磁気メディア等である。 本稿の理論仮説である,「活力型動画視聴の主観的頻度が多い学生ほど,レジリエンスとQOLが高い関係性を示す」は, 横断調査データに基づく共分散構造分析のモデル全体が基準を満たす良好な適合度を満たし,さらに上記仮説の因果的関係性に該当するモデル内におけるパス係数の統計的有意性が示されたことから検証された。QOLに及ぼす向上効果は活力型動画視聴よりも良書読書行為の方が高いものの,追加調査の縦断データに基づく共分散構造分析モデルにおけるレジリエンスに及ぼす短期的効果に関しては,その即時性の故か活力型動画視聴のみ有意性を示すという結果を示し,質の良い動画視聴のレジリエンス向上効果を確認した。
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