研究課題/領域番号 |
17K01275
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
坂部 創一 創価大学, 理工学部, 教授 (50235165)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 新型うつ傾向 / テクノ・ネット依存症傾向 / レジリエンス / 共同運動 / QOL |
研究実績の概要 |
今年度の研究の目的は,情報環境の進展に伴いPCやインターネットへの過剰依存や,うつ病が職業病的傾向を示すIT技術者になる可能性が高い情報系の学生に対し,治癒が容易でない新型うつ病の予備軍の傾向を調査し,発症のリスクを減らしてQOL(Quality of Life)を向上させる予防策を検討することである。新型うつとは,責任感が強く協調性があり自責的な傾向を示す従来型うつと対照的で,主として仕事や勉学をしようとする時にのみ強い疲労感や不調感を訴えて逃避的傾向を示し,自身への批判に弱いと共に自責感に乏しく他罰的でその不調を会社(学校)や上司・同僚(教師・友人)のせいにして根に持つ傾向を示す。この種のうつは,2000年頃より青年層から台頭してきており,現在でも精神科臨床・産業保健などの現場でこうした症例に遭遇することは稀ではないのに,有用な診断基準やエビデンスに基づく治療ガイドラインは未だに存在せず,精神科医の対応はさまざまである。 検証用の理論仮説の,「テクノ・ネット依存症傾向が高い学生ほど,新型うつ傾向とQOLが悪化する傾向を示す」と,「共感的ネット利用とレジリエンスや共同運動愛好度が高い学生ほど,新型うつ傾向が抑制され,QOLが高い傾向を示す」は,縦断モデル分析の結果検証された。また,この縦断モデル上での因果の方向性を,2時点目の調査データによる横断モデルに反映した要因間の全体的な因果連鎖の適合度もその良好度が検証された。これらから今回のモデル上では,新型うつ傾向への予防策としては,過剰な動画視聴を控えるなどテクノ・ネット依存症傾向のリスクに注意し,複数人での共同運動の促進とレジリエンスの強化が有効である。また,活力が得られる動画視聴や苦楽を共有し相互に励ましあう共感的ネット利用のレジリエンス向上効果にも着目すべきであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,IT 技術者の予備軍である情報系大学生を対象に,現実逃避利用に陥りがちな「テクノ・ネット依存症傾向」が「新型うつ傾向」と「レジリエンス」を悪化させるという仮説を検証し,その予防策を分析・提案することである。今回の縦断分析結果からその仮説は検証され,さらに新型うつ傾向の予防効果の中で精神的回復力を意味するレジリエンスの寄与率が最も高いことが分かり,そのレジリエンス向上をもたらしているネットの具体的な効果的活用方法も提示できた。
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今後の研究の推進方策 |
理工の情報系の学生を調査した大学で,文系の学生も同時に調査しているので,今回の分析前に設定した類似する仮説で同様な検証と分析を行い,両者の分析結果の比較を行うことで,理工情報系の学生の新型うつ傾向予防のためのネット活用の強調すべき留意点を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度にデータ分析に必要な機械学習のソフト等の導入を予定しているので,その分予算執行を先送りした。
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