研究実績の概要 |
当初計画に従い、安定した株式市場の形成を目指し、商品の販売記録(POSデータ)を統計処理して企業のリアルタイムな業績を算出(ナウキャスト)する技術を開発するために、段階的に次の研究を実施した。 1) データベースを整備し、POSデータベースと上場企業データベースの企業を紐づけた。 2) POS売上と実売上の相関より、ナウキャスト可能な企業・業種を統計的に明らかにした。 具体的には、全米に約38,000店舗あるスーパーマーケットの約5%をランダムサンプリングし、そのPOSデータを2001年から2012年まで集計した、IRi Growth delivered社が提供するデータベース『アメリカのスーパーマーケットのPOSデータ』の売上情報を製造企業別に四半期ごとで集計し、親会社レベルで連結した。 次に、このPOSデータを集計して算出した売上(POS売上と呼ぶ)と、トムソン・ロイター社が提供するデータストリーム『世界各国の上場企業の業績と株価およびI/B/E/S評価』から入手した、上場企業が公表する連結決算の売上業績(実売上と呼ぶ)との比較を行った。 その結果、主要製品が日用品である企業の実売上の伸び率が、POS売上の伸び率と強く相関していることが観測された。そして、企業決算の売上高に占めるスーパーマーケットの売上の割合(カバー率と呼ぶ)が大きいほど、POS売上の伸び率と実売上の伸び率の相関が強くなることを確認した。これらの結果を用いて、カバー率が高い企業では、POS売上の前期比と前年同期比より、次期四半期決算の実売上を予測精度付きでナウキャスト可能なことを示した。 本研究により、主要製品が日用品である製造業のようなカバー率が50%以上の企業であれば、POSデータを利用することによりその決算売上は、リアルタイムでナウキャスト可能であることを明らかにした。
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