研究課題/領域番号 |
17K01282
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
伊佐田 百合子 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (00351867)
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研究分担者 |
井垣 伸子 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (40151253)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 傍観者行動 / 質問票調査 / 援助規範意識 / 多次元的共感性 / 他者意識 |
研究実績の概要 |
平成30年度はいじめの場面において傍観者の仲裁行動を生起させる意識要因を明らかにすることを中心に取り組んだ.平成29年度に実施したインターネット調査結果の分析では,いじめの傍観者の心理と傍観者行動の関係について検討したが,いじめやいじめられた経験の影響や,傍観者の意識と仲裁行動の関係に関しては充分に分析が実施できていなかった.一般的に,いじめはいじめる側といじめられる側というように役割が固定しているわけではなく,いじめられたりいじめたりというように役割が流動的に変化していくといわれている.今年度の本研究の目的は,いじめが発生している状況の中で傍観者に仲裁行動を生起させるために,他者への意識や共感,援助規範意識がどのように作用するのか,また,いじめ経験やいじめられた経験の影響を明らかにすることである. 仲裁的な行動をとる傍観者は,他者の内面に対する共感力やいじめに対する嫌悪感が強く,他者の状況をイメージする能力に優れた者であることがわかった.一方で,他者の外見に関してはこだわりがなく,他者の苦痛を自分の個人的なものとして捉えない傾向があることが明らかになった.いじめられた経験を持つ傍観者と持たない傍観者とを比較した結果,いじめられた経験を持つ傍観者は,いじめに対する嫌悪感が強く,援助を相互交換的に捉える傾向が強いことが明らかとなった.一方で,いじめた経験を持つ傍観者は,持たない傍観鞘と比較して,いじめに対する嫌悪感や弱者救済意識が低く,迷惑をかけられたときには償いを求めるという気持ちが強いことが明らかになった. この研究成果は2018年9月ローマ,イタリアで行われた42nd International Academic Conferenceにおいて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,平成29年度に実施したシミュレーション実験の結果を踏まえ,より現実に即したシミュレーションを行うために,傍観者といじめの被害者や加害者との関係性や心理的距離,傍観者相互の関係性や心理的距離,傍観者自身の性格等の関連諸要因について,アンケート調査を行い,その結果を分析した.令和元年度は構築したシミュレーション環境の精度を高め,いじめが発生している現場に適用可能な施策を抽出することを試みる予定であり,その準備を実施するためである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,構築したシミュレーション環境の精度を高め,いじめが発生している現場に適用可能な施策を抽出することを目的として研究を行う.これまでのシミュレーションでは傍観者がいじめを報告する者の割合を把握しており,それによって自らがいじめを報告するか否かを決定しているものと仮定する閾値モデルとしてモデル化したが,より,現実に近いモデルにするために,ある一定の割合で傍観者が報告するか否かを決定するものと仮定し,さらに,傍観者が報告するか否かの選択肢以外にいじめる側に回るという第三の選択肢を考え,3選択の問題としてモデル化を実施する.さらに,傍観者の報告する割合を各人ごとに変化させたり,関係性や心理的距離,傍観者自身の性格等の関連諸要因のパラメータをランダムに変化させたり,より現実に近いシミュレーション実験を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査をインターネットアンケートとして実施したこと,シミュレーション実験を前倒しで実施したことにより,データ入力費用などの人件費が不要となったこと,シミュレーション実験を効率的に行うためにコンピュータ一式を新規購入したが,予定したよりも低価格で入手することができたことにより,次年度使用額が発生した.次年度は追加のアンケート調査を実施する予定にしており,この費用を使用して調査対象範囲を拡大する予定である.
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