2020年度は、貿易統計データの特性把握、貿易統計データと船舶動静データ等を連結するための解析手法の詳細化を行った。また、各解析手法を統合するための輸送モデルに関する検討を行った。 貿易統計データの特性把握に関して、ある国が報告する相手国別の輸入価額(輸入データ)と、それに対応する相手国の輸出価額(輸出データ)が一致しない貿易統計の不整合問題が存在するが、日本、タイ、米国の輸送機関別の貿易統計データを解析し、輸送機関別貿易統計データの不整合問題の傾向を把握した。また、一部の国・地域でのみ公表される国際輸送コストが分離可能な貿易統計で算出可能となるCIF/FOB比率について、米国の貿易統計データを使用して、データの安定性等の解析を行った。本研究では、CIF/FOB比率が、不整合問題を調整するため、また国際輸送コストを推計するために重要であることを示している。 貿易統計データと船舶動静データの連結に関しては、両データを連結するために、船舶動静データを高度化する方法の検討を行った。具体的には、個別船舶の寄港状況が得られる船舶動静データと、自動船舶識別装置(AIS)から得られる喫水データを利用し、個別船舶の積載貨物量を推計する方法を、コンテナ船とバルクキャリアのデータから再検討した。個別船舶の積載貨物量を推計する方法として、統計的手法に基づく欠損値補完や機械学習のニューラルネットワークを適用し、推計方法の妥当性を示した。
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