研究課題/領域番号 |
17K01296
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石川 真志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (10635254)
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研究分担者 |
小山 昌志 明星大学, 理工学部, 准教授 (00453829)
笠野 英行 日本大学, 工学部, 助教 (20514417)
八田 博志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 専任教授 (90095638)
宇都宮 真 国立天文台, JASMINE検討室, 研究支援員 (70450707)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 赤外線サーモグラフィ / 熱波動 / コンクリート / CFRP |
研究実績の概要 |
本研究は赤外線アクティブサーモグラフィ法を利用した非破壊検査において、樹脂材料などの低熱拡散率物質への検査に際して必要となる長大な検査時間の短縮を目指し、熱波動の観点からその方策を検討することを目的としている。具体的には、熱波動はその成分周波数が高いほど速い速度で伝搬することから、対象物へ入力された熱波動中の高周波数成分を抽出、利用することで従来方法と比較して検査時間の短縮が可能となると考えられる。 初年度は、まず熱波動周波数の変化に伴う熱伝播速度の変化を実験的に検証するため、コンクリート試験片に対する周期加熱試験を実施した。実験の結果、対象物中を伝播する熱の速度は加熱周期の増加とともに増加することが確認された。 また、上記の結果を踏まえ、連続的な長時間加熱を行い、入力された熱の高周波数成分を選択的に利用することによる検査時間の短縮効果について実験的な検証を行った。実験では、表面から深さ10 mmの位置にスリット状の人工欠陥(厚さ2 mmの空気層)を有するコンクリート試験片を用い、これを加熱、赤外線カメラによる表面温度の観察を行った後に、得られた温度データに対するフーリエ変換を行うことで任意の周波数における位相画像を作成し、位相画像からの欠陥検出を行った。その結果、欠陥部は最大約0.01 Hzの周波数の位相画像において検出が可能であった。これは、熱波動の一般的な理論における熱浸透深さ(熱波動の周波数と対象物の熱物性から推定される熱の伝播可能距離)の観点から予測される周波数(コンクリート中深さ10 mm欠陥の検出を行う場合に必要とされる周波数は0.0007 Hz)と比較して大きい。フーリエ変換により計算される最低周波数は検査時間の逆数に一致することから、従来の予測よりも大きな周波数での欠陥検出が可能であった本結果は、従来法よりも検査時間の短縮が可能となり得ることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、検査対象物にヒーター等による周期的な加熱を行った際、入力される熱波動の周波数成分の変化とそれに伴う熱伝播速度の変化について検討を行うこととしていた。上述の研究実績の概要の通り、平成29年度は当初計画に関する実験的な検討を実施し、対象物を伝播する熱の速度が加熱周期とともに変化することを確認した。また、様々な周波数成分を含む熱を入熱し、得られた温度データからフーリエ変換を用いることで特定の周波数を抽出することも試み、本方法により理論的に予測される熱伝播に要する時間よりも短時間での検査が可能となり得ることが確認された。これらのことより、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討結果より、より高周波数の熱波動を入力、検出することで、より短時間での検査が可能となり得ることが確認された。これを踏まえ次年度(平成30年度)では、まず高周波数成分の熱波動を効率的に励起、入力可能な加熱方法の検討を行う。単純なパルス入力やステップ入力のみではなく、比較的大きな高周波数成分を有する熱入力形状(加熱の時間変化)を検討し、これによる検査時間の短縮効果の検証を行う。 また、熱波動の理論より、周波数の高い熱波動成分は伝播に伴う減衰が大きく、周波数が高くなるほどその検出が困難となる(つまり、入力された熱が内部欠陥において反射し、表面へ戻ってきた際に生じる温度差が小さくなる)ことが予想される。このため、この微小変化を効率的に検出するために効果的なデータ処理方法(位相データ変換に際するフーリエ変換適用範囲の最適化、データ中のノイズ低減のためのフィルタリングの検討、など)を合わせて検討し、より短時間での検査(より高周波数成分の検出)の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は主として検討技術に関する基礎検討を実施し、得られた成果の公表(学会発表等)は次年度に行うこととした。また、当初予定していた会議等をデータベースの電子会議としたことなどもあり、当初よりも旅費の支出が少なくなった。繰り越し分は、次年度の国際会議の参加に際する旅費等として使用予定である。
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