研究課題/領域番号 |
17K01297
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
柏原 考爾 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40463202)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知心理学 / 安全システム科学 / 生理心理学 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
高速道路での自動運転の実用化とともに、各種運転操作の自動化も進んできている。この様な自動運転では、交通環境の変化を高精度で把握しなければならない。しかし、歩行者・自転車の突然の飛び出しや前方車両の急な車線変更等、予期せぬ緊急事態に対し、自動化システムが円滑に対応しきれない場面もある。特に、緊急時に自動から手動運転に切り替わる準自動運転では、運転者の眠気やよそ見等が重大事故に繋がる。本研究では、運転者の注意力が散漫な状態において、前頭葉のシータ波や頭頂葉のアルファ波が関与することを示唆できている。また、運転者の持病の一つとなり得るてんかん発作は、緊急時の運転操作へ影響することも考えられる。従って、脳波信号から発作(異常状態)を予測・検知する解析手法(時間周波数解析)の高精度化も検討した。以上の成果をブレイン・コンピュータインタフェースとして実現できれば、準自動運転のみならず、通常運転での警告システムとしても応用できる。
高速道路のサグ部(道路勾配の変化点)・インターチェンジの出入口・合流地点等では、過度な減速により車両の流れが悪化し、追突・接触事故の可能性も増える。また、災害・道路工事による交通規制も事故や渋滞の要因となる。実用化が進む自動運転では、この様な複雑な交通環境の変化を瞬時に把握し、安全かつ効率の良い走行経路を素早く決定する必要がある。特に、種々の環境に柔軟に適応できる深層強化学習は、複数台の車両の移動(マルチエージェントシステム)を想定し、交通状況が刻々と変化する場面でも有効となった。また、自動運転と一般車が混在した状況下での運転者の心理特性(眠気や焦燥感等)も、交通シミュレーションに加味して検討した。カーナビや交通ニュース、交通管制センターからの指示等を用いれば、適切な対処法をフィードバックできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従い、準自動運転時の認知心理特性(注意・集中力に関する脳活動・自律神経活動)を考慮した事故防止策(生体計測データに基づく危険の警告方法等)について、重要な知見が得られている。また、深層強化学習を中心とした人工知能を基に交通シミュレーションを実施し、自動運転と通常の運転が混在した状態で生じる問題点や改善策についても言及できている。研究成果は、適宜、学会にて公表できるようにまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を発展させ、緊急時に運転操作が自動から手動になった際の脳活動(脳波)や自律神経活動(心電図)を実験により検討する。また、実験により得られた生体計測データに人工知能・機械学習を適用することで、準自動運転での交通事故を低減し、安全な交通環境を構築できる手法を検討する。研究成果は関連学会で公表し、新たな視点から研究手法を改善していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に用いた生体計測システムは、脳波・自律神経活動の測定部位を簡略化することで、必要となる機器の数を最低限に抑えられた。また、無償のソフトウェア(プログラム)等を応用することで、解析・検証を実施できた。さらに、ボランティア(研究室内)の被験者やシミュレーションにより謝金を抑えることができた。次年度以降は、外部(一般)の被験者への謝金及び生体計測に必要な消耗品の購入を予定している。
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