研究課題/領域番号 |
17K01299
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
後藤 雄治 大分大学, 理工学部, 准教授 (00373184)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表裏面浸炭 / 加熱炉鋼管 |
研究実績の概要 |
本年度は、人工的に浸炭鋼管を作成し、その試験鋼管を利用して表裏面浸炭深さが評価できる電磁気センサの励磁電流値や励磁周波数等における適性な検査条件を実験を中心に検討した。 日本の実際のプラント等で使用されている加熱炉鋼管は、寸法や材質は一般的なものは規格で統一されている。具体的な鋼管材質はSTFA26強磁性鋼材であり、加熱炉鋼管の寸法は肉厚が6mmで、外径114mm程度である。本年度は新品の加熱炉鋼管(STFA26鋼材)を入手し、人工的に浸炭深さを様々に変更して表面及び裏面の浸炭を施し、数種類の試験用浸炭鋼管を作製した。実際の加熱炉鋼管の表裏面浸炭深さは、表裏面ともに深さ1mm~3mm程度であるため、具体的には表面浸炭深さは0mm~2.5mm、裏面浸炭深さは0mm~3mmの範囲内で人工的に浸炭層を作成した。次に、この試験浸炭鋼管を使用し、本提案手法での最適な検査条件(2種類の励磁周波数や励磁電流値)の選定を、3次元有限要素法の磁気特性の非線形性を考慮する電磁界解析も駆使して行った。なお使用した電磁気センサは昨年度に検討・試作した形状のセンサを使用している。その結果、まず500Hz、0.2Aを電磁気センサの励磁コイルに流し、高周波数磁界を鋼管表面より印加させる。この場合、印加磁界の周波数が高いため、表皮効果の影響から鋼管の表面のみに磁束が分布する結果、得られた検出電圧から検定曲線を使用して表面浸炭深さのみが推定できる。次に電磁気センサの位置は移動させることなく、15Hz、0.2Aを電磁気センサの励磁コイルに流し、低周波磁界を鋼管表面から印加させる。この場合、印加磁界の周波数が低いため、鋼管肉厚の深い部分まで磁束が浸透する。この印加磁界条件で得られた検出電圧から、各表面浸炭深さに伴う裏面浸炭深さが異なった検定曲線を使用することで、裏面浸炭深さも推定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際のプラントで使用されている加熱炉鋼管(STFA26鋼材)は特注品であるため、新品の鋼管の入手が困難である事を懸念していたが、比較的容易に入手でき、さらに人工的な表裏面浸炭入り試験鋼管の作製もスムーズに行えた。概ね、計画通り、前年度に試作した電磁気センサを使用して、検査に適正な磁化条件を求めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
検査現場においては加熱炉鋼管の表裏面浸炭深さを±0.5mmの精度で評価できることが要求されている。そこで、この検査精度を達成する検査条件の選定を行う。また、実際に20年以上に渡り石油精製プラントで使用されてきた加熱炉鋼管の一部を切り出し、断面マクロ試験で表裏面浸炭深さが予め把握できている浸炭鋼管を準備し、本提案手法を用いて、検査精度の確認を行う予定としている。
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