研究課題/領域番号 |
17K01302
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
武藤 伸明 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (40275102)
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研究分担者 |
湯瀬 裕昭 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (30240162)
池田 哲夫 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (60363727)
斉藤 和巳 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (80379544)
大久保 誠也 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (90422576)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 道路網安全性 / 道路閉塞 / 道路網信頼性指標 / 複雑ネットワーク / 移動中心性 / 移動連結性 / オープンデータ |
研究実績の概要 |
本研究では、災害発生時の道路網安全性の向上に資する革新的な技術を確立する。東日本大震災や阪神淡路大震災の際には、一部の道路リンクが切断されることにより、他の地域から孤立する地域が発生したり、異なる地点間の最短経路長が大幅に増えたりして、連結信頼性、時間信頼性の深刻な低下をもたらした。 本研究は、自然災害発生時に一部の道路リンクが切断され道路網が複数のサブネットワークに分断されたとしても、サブネットワーク内には住民の一時避難所や物資蓄積庫が存在することが必須であり、また、それらのサブネットワーク内での一時避難所への到達時間や物資蓄積庫間の輸送時間は短い必要があるという機能要求に着目する。これらの機能要求に対応した信頼性指標として移動連結性・移動中心性を提案する。これらの信頼性指標は明らかにそれぞれ連結信頼性と時間信頼性に密接に関連する。 次いで静岡県を中心とした広域エリアでの、道路閉塞を考慮した住民の移動行動モデルを確立する。これについては本研究の成果を広く利用可能とするため、OSM (OpenStreetMap)などオープンデータの積極的利用を行う。次いで、大規模データについても現実的な時間で信頼性指標値を計算しうる高速計算方法を構築する。また、新規避難地選定問題など減災に有用となりうる各種応用の解法を確立する。さらに、自治体に実験データを提供し、自治体の専門家と共同で評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害発生時の道路網安全性の向上に資する技術の確立を目的として、平成29年度は、1.道路閉塞を考慮した移動行動モデルの確立、2.大規模エリアに適用可能な移動中心性と移動連結性の高速計算法の構築を中心に研究を実施した。 具体的には、大規模災害におけるユーザ行動モデルを構築した。また、道路網安全性の信頼性指標として、移動連結性を提案した。これは、人間関係などソーシャルネットワーク上での影響最大化問題の考え方を土台にし、拡張したものである。さらに、移動連結性の考え方を土台にし、ある交差点を新たな避難地としたときに、全体として移動連結性がどれ程高まるかを示す指標として、移動連結性改善度を提案し、切断確率を変化させながら道路を分断させた場合のシミュレーションにより、静岡県にある三つの主要都市ごとに、改善度の上位地点すなわち避難地を追加すべき地点を求めた。これに基づいて、都市ごとの避難地配置の特徴、道路閉塞確率を変化させたときの避難地配置の変化の仕方などを調査した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度からは、下記の研究に取り組む。 移動行動モデルに基づく各種応用と解法の開発:新規避難候補地の選定問題に取り組む。一般に、より多くの避難地があれば、住民の利便性は向上するが、特に民間の遊休地や工場などを新たに避難地とするには、交渉や契約など然るべくコストが必要になる。本研究では、候補地に対し、移動中心性と移動連結性の増分で利便性向上度を定量的に評価し、交渉などのための優先順位を付与する手法を構築する。また、移動における重要道路検出問題にも取り組む。特定道路の切断により、住民の利便性が大幅に減少するとき、これを重要道路と呼ぶ。本研究では、ある道路の切断の有無での条件付き期待値として移動中心性と移動連結性を求めることにより、各道路の重要度を定量的に評価し、道路構造物や沿道建築物の耐震化などの優先順位を付与する手法を構築する。 自治体への実験結果の提供と自治体の専門家との共同評価:実験結果の定性的評価に取り組む。本研究で確立した技術を、静岡県とその隣接県の道路網に適用し、新規避難候補地や重要道路を検出する。検出された新規避難候補地や重要道路とそれらの優先順位などが適切かつ有用であるかを、静岡県地震防災センターの防災の専門家と静岡県庁の交通基盤部の職員の協力を得て、検証を行う。さらに、自治体に新規避難候補地や重要道路のデータをどのような形式で提供すべきかについても検討し、県や市町に働きかけ、本研究成果を取り入れてもらい、自治体の地震対策に貢献を目指す。また、自治体からのフィードバックを本研究の評価として取り込んでいく。研究のための収集データや実験結果のオープンデータ化についても検討し、公開できるものから順次オープンデータとして公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に災害時における適切な避難所配置のための基礎的理論を確立した。平成30年度は、その理論に基づく実際に運用可能なシステム開発を実施する。このシステム開発に必要な人件費、物品費などに使用するため、次年度に向けて667千円余を確保する。
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