研究課題/領域番号 |
17K01311
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
武尾 文雄 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70171626)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 直流電位差法 / 円管 / 減肉 / 評価 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
〇円管内面の局部減肉評価手法の開発 円管内面の局部的な減肉の深さを管外面での計測電位差から評価する手法を検討した。外径D、初期肉厚t0なる円管の内面に、開口幅W、最大深さbの円弧形状断面の溝状減肉部が全周に存在する場合を対象とした。最大深さと管外径はb/t0、D/t0で、減肉部の幅は管外径への依存を考慮してW/Dで表す。減肉部を挟んで設置した端子間に一定電流を入出力し、その間に等間隔で設置した端子により電位差分布を測定する。減肉前・後の電位差をV0 、V1とし、電位差比V1/V0のピーク値Vmax/V0から最大減肉深さb/t0を評価する手法を検討した。種々の減肉寸法に対する電位場解析によりb/t0とVmax/V0の関係を求めた結果、D/t0 = 10の場合、W/D≧1.0の減肉に対しては、同関係がほぼ1本の曲線で表されることが判明した。同曲線を関数近似した較正関係式を用い、有限要素法により得た電位差を計測値と見立てた数値実験によりb/t0 = 0.4~0.8の範囲で減肉深さ評価を試みた。その結果b/t0 = 0.4の場合にやや誤差が大きいものの、それ以上では概ね良好な評価結果が得られた。 〇幅の広い局部減肉部に対する評価手法の検討 大径管の場合、減肉部の管軸方向の開口幅Wは初期肉厚t0に比してはるかに大きくなる。このような減肉部では、電流入出力と電位差計測の4端子を肉厚の数倍程度で固定し、管軸方向に移動しながら電位差の分布を測定する手法が有効と考えられる。そこで前年度に製作した半円管試験片に対し、一様減肉の評価手法を適用して減肉深さ分布を評価する実験を試みた。その結果、減肉部形状に近い深さ分布が得られたものの、最大減肉部付近では浅く評価されることが分かった。これは端子間の平均的な深さが評価されるためと考えられることから、端子間隔の設定によって評価精度を向上できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
円管内面に溝状の局部減肉がある場合に関する測定面曲率(管外径)の影響解明ついては、令和元年度の計画がやや遅れていたが、検討の結果、対象となる配管の多くが該当すると思われるD/t0 = 10、W/D≧1.0の条件下ではその影響が小さく、共通の較正関係によって減肉深さを評価できる見通しが得られた。また円管の局部減肉評価実験の方法については、令和元年度に課題を残していた半円管試験片に対する電極設置方法を工夫することにより、計測のばらつきを抑制することが可能となった。 令和2年度に計画していた幅の広い局部減肉部に関する検討では、一様減肉に対する評価手法を用いて管軸方向の減肉深さ分布を評価する方法を試行した。今回、実施した範囲では、最大減肉深さの評価結果に比較的大きな誤差が生じたが、局部減肉評価に適する端子間隔の検討などにより、評価精度の向上が期待できる。その検討は課題として残されている。また、令和2年度に計画していた減肉部の検知感度および評価精度の検討については、円管内面の溝状欠陥の評価に関して、有限要素解析結果を計測値と見立てた数値実験により、較正関係の関数近似等に起因する評価精度を検討した。一方、検知可能な最小減肉量については電位場解析と実験を合わせて評価する必要があり、知見を得るに至っていない。 以上のことから、全体としての進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、令和2年度までに十分検討できなかった項目について実施する。管内面の溝状局部減肉評価については、半円管試験片を用いた最大減肉深さ評価実験を行い、評価精度を検証する。また幅の広い局部減肉評価については、端子間隔に関する検討を行い、評価精度の向上を図る。併せて、検知可能な最小減肉量について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、業務多忙のために計画内容に遅延が生じたことから、実験等に必要な経費等の一部を使用せず、延長した令和3年度の研究に使用する。
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