火災時に煙を伴って上昇する熱気流が天井面で向きを変え,天井面に沿って拡がる天井流は火災感知器やスプリンクラー設備の作動に影響を与えるため,火災に伴う熱流動の素過程としてこれまで広く研究されてきている。 平成29年度はトンネルや長い廊下で生じた天井流に着目し,側壁の影響を受けて通路長手方向に流れる射流域から,密度不連続を経て天井流の厚みが概ね一定となる常流域に至る簡易的な理論モデルについて考察し、天井流と接している通路側壁部分の影響も考慮し、かつ射流域から常流域までを順次系統的に求めることができる簡易理論モデルを新規に開発した。 平成30年度はこれを更に簡略化し、火源中心軸上方の天井面近傍温度を参照温度として直接常流域の温度減衰を予測できるモデルへと改良した。また、通路断面のアスペクト比(高さ/幅)に依存せず、天井流の温度減衰性状を統一的に整理することが可能な代表長さの設定方法を提案した。 最終年度は、断面のアスペクト比(高さ/幅)が異なる模型トンネルを対象に、数値流体力学モデルを用いて天井流の数値シミュレーションを実施し、その結果の考察から天井流の厚みの定義方法を提案した。数値シミュレーションには、米国国立標準技術研究所が開発したFire Dynamics Simulator 6.5.1を用いた。対象とする矩形断面の形状を5種類とし、その内の1種類は模型実験に合わせ、数値シミュレーション結果の比較検証を行った。天井流の簡易理論モデルの解析解に基づき、前年度に類推した代表長さの設定方法と合わせ、厚みの定義方法の妥当性を示した。 研究期間全体を通じて、天井流の流動性状を簡便に推定できる実用的な予測式を開発した。
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