研究課題/領域番号 |
17K01316
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
島田 行恭 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, リスク管理研究センター, センター長代理 (10253006)
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研究分担者 |
渕野 哲郎 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30219076)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 化学物質 / プロセス災害防止 / 教育訓練 / リスクアセスメント |
研究実績の概要 |
・安全教育訓練の現状調査として,大手化学企業及び電気工事事業者などが所有する安全教育・訓練施設を見学した.これらの施設では,爆発,火災などのプロセス災害だけでなく,機械による挟まれ・巻き込まれや,高所からの墜落・転落など,様々な体感教育が行われているが,教育・訓練内容の多くは過去に発生した事故や労働災害に基づくものとなっている. ・教育方法に関する先行事例の調査として,建設作業を対象とした危険予知テストのためのCG動画活用について考察した.建設作業のリスクは作業者と環境が複雑に影響し合って変化するため,CG動画による危険な状態やそれ以外の背景の再現の程度が教育対象者の注意や危険な状態の発見に大きく影響することが明らかとなった. ・平成28年6月より,特定の化学物質のリスクアセスメント等(以下,RA)の実施とその結果を労働者に周知することが義務化された.そこで,化学物質の危険性に対するRA等の実施結果を教育内容の検討に活用することについて考察した結果,次のような有用性が認められた.1) RAでは潜在する危険源を網羅的に想定し,プロセス災害発生に至るシナリオとリスク低減措置を検討する.そのため,過去の事故災害やヒヤリハット体験などを基に選定されていた従来の教育内容には含まれない事象についても考えることができる.2) RA実施シートに記録される結果だけでなく,検討プロセス(RA実施時に何をどのように検討したか?)を補足して教育すれば,実際に行う作業のKnow-Why情報などを知ることもできる. ・化学物質のGHSの絵表示に関する認識と教育実施状況について調査した.9つの絵表示の中には,危険性または有害性の内容が理解しにくいものがあり,それらに対する教育の必要性などが明らかとなった. ・化学プロセス設計時に検討されるプロセスケミストリーに関する設計論理の整理方法とその活用について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内企業における安全教育・訓練の実状について調査を行うとともに,化学物質の危険性に対するリスクアセスメント等(RA)の結果に含まれるべきプロセス安全情報を整理することで,RAの実施結果を活用することの有用性について考察した.化学物質特有の規制の一つであるGHSの絵表示の理解度について調査し,教育が不十分な点などを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
作業者に教育・訓練すべき内容を選定する方法を体系化するために,以下の検討を行う.①過去に発生したプロセス災害事例の中で作業者のミスなど(ヒューマンエラー)に起因する事故事例などを分析し,災害の種類・規模・改善策などの観点から分類することで,作業者に教育・訓練すべき内容を抽出・整理する方法を検討する.②プロセス災害防止のためのリスクアセスメント等の実施を通して得られる化学物質の危険性や実装されたリスク低減措置の設計論理に関する知見などから,教育・訓練すべき内容を選定する方法を検討する. 作業者の危険認識能力を効果的に向上させる方法を体系化するために,以下の調査・検討を行う.①先行事例として,交通安全・建設業などで既に活用されているタブレット端末を用いた教育・訓練システムを化学産業の現場安全に適用することの有用性について検討する.②プロセス災害を引き起こすかもしれない危険な化学物質を取り扱っていることを意識させる(リスク感性を高める)ことのできる教育・訓練方法を検討する. 上記の検討結果を基に,作業者安全教育・訓練支援システムの仕様を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
教育・訓練に関する実状調査は国内企業を対象として実施し,海外での調査を行うことができなかったために残額が生じた(国内で開催された国際シンポジウムに参加し,教育・訓練に関する調査を行った).繰り越した経費は,平成30年度以降に開催される国際会議への参加・発表のための旅費及び参加費等として使用する.
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