研究課題/領域番号 |
17K01319
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
大場 司 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (10272014)
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研究分担者 |
藤縄 明彦 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10143140)
伴 雅雄 山形大学, 理学部, 教授 (50208724)
林 信太郎 秋田大学, 教育学研究科, 教授 (90180968)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水蒸気噴火 / マグマ水蒸気噴火 / 予期せぬ火山災害 / 単成火山 |
研究実績の概要 |
本課題の主要な実施内容は,日本及びアジア・オセアニアを対象としたフィールドワークによる火山災害の過去事例収集と事象解析である。平成30年度の主要な実施実績は次を対象としたフィールドワークである。(1)インドネシアジャワ島ケルート火山先史~有史時代の噴火、(2)フィリピンパラワン島における未知の単成火山(マングワオ火山)の発見、(3)フィリピンルソン島アリゲーターレークにおける単成火山の発見、(4)吾妻火山有史時代における水蒸気噴火発生履歴とその起源、(5)鳥海火山における爆発的火山噴火、(6)蔵王火山における有史時代の噴火推移、(7)秋田焼山火山における爆発的噴火の推移、(8)秋田駒ヶ岳火山における噴火時の対応、以上の各項目について主として現地での踏査等による調査を実施した。本年度は、これらの現地調査での成果をとりまとめる一方、(1)~(6)については採取試料についてXRF, SEM-EDS,同位体等の分析を実施し、詳細な事象解析の研究対象としている。さらに、平成29年度に現地調査を実施し、その後、詳細な事象解析を行うために分析を行った対象(ケルート山2014年噴火の機構解析、スマトラ島ラジャバサ火山およびニューブリテン島ラバウル火山先史噴火の推移に係わるマグマの推移、十勝岳火山およびジャワ島タンクバンパラフ火山における水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火の発生機構と熱水系の役割)については、本年度分析を完了し、査読付論文・国内外での学会発表として成果公表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、国内外(インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア)における予期せぬ噴火災害の事例収集と詳細現象解析とした目的に従い、前年度(平成29年度)に引き続き各地においてフィールドワークを実施し、事例収集を行うとともに、各事例の詳細解析を行った。インドネシア、フィリピン、日本国内における現地調査によって、新たにインドネシアジャワ島ケルート山における先史~有史時代の火砕流災害を伴う噴火、フィリピンパラワン島における未知の単成玄武岩質火山の発見、ルソン島アリゲーターレークにおける単成火山の事例、鳥海山における過去4000年間の水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火の履歴、吾妻山における歴史時代での一連の水蒸気噴火、秋田焼山における最近の活動、蔵王山における最近の活動に関する事例を調査した。また、水蒸気噴火等、予期せぬ噴火災害が発生した場合の登山客などへの対応について、秋田駒ヶ岳の事例について検討した。更に、前年度から継続して実施した試料分析により、水蒸気噴火の発生機構や特徴をまとめた報告(及川他、2018)、十勝岳におけるマグマ水蒸気噴火・水蒸気噴火の発生機構と熱水系の役割(井村ほか、2019)、パプアニューギニアラバウル火山における近年の噴火に係わるマグマ供給系の解明(Singura et al., 2018)等については、本年度中に成果を公開した。以上より、着実に成果が得られており、本研究は順調に進展しているといって良い。なお、「予測困難な火山災害」として過去の事例を調査した結果、当初予想していなかった結果として、玄武岩質単成火山を考慮する必要があることが判明した。特に、フィリピンの事例から得られた知見である。そのため、次年度以降は玄武岩質単成火山に関する調査も実施する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は前年度までから継続し、水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火・ラハールの地質時代における事例収集と機構解明を行うため、地質フィールドワークと試料分析を主とした調査を行なう。ただし、これまでにフィリピン・モンゴルにおいて予測困難な現象として玄武岩質単成火山の重要性が認識されたため、調査対象とする事象として、玄武岩単成火山活動を含めることとする。調査対象は、インドネシアおよび日本国内の火山を対象とする。日本国内の火山として、鳥海山、吾妻山火山、蔵王火山を対象とするが、火山活動の状況によっては対象火山を変更することもあり得る。インドネシアでは、水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火の事例収集を、中規模噴火を近年繰り返しているスラウェシ島のロコン火山での調査も実施する予定である。また、インドネシアジャワ島において玄武岩質単成火山(対象はラモンガン火山)に関する調査を実施する。国内では,主に鳥海山の調査を実施し,過去数千年の噴火履歴調査を基に,水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火・マグマ噴火の発生履歴解析を集中的に行った上で、噴火機構の解明に向けて火山灰試料の岩石学的解析を実施する。火山灰試料分析においては、既存研究手法である全岩・斑晶の化学分析にとどまらず、気泡・石基組織解析、火山灰形態組織等の新しい岩石学的手法を応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査および試料分析はほぼ計画通りに行われたが、調査・分析の進展が予想よりも早く進み、かつ一部物品の消耗が予想よりも少なく済んだために若干の残額が発生した。次年度へ繰り越し、旅費の一部、分析消耗品、成果公表に係わる経費に充てる。
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