研究課題/領域番号 |
17K01320
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
松冨 英夫 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (20134083)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 津波 / 氾濫水密度 / 遡上 / 土砂堆積 / 波力 / 実験 |
研究実績の概要 |
津波氾濫水の密度については、データの蓄積とより実際的なデータを得るために水理実験を継続するとともに、氾濫水密度の簡易評価法を提示した。この評価法は土砂の流水断面平均濃度(∝氾濫水密度)を対象とし、掃流土砂と浮遊土砂を分離せずに全流送土砂で論じている点に特徴がある。この評価法の開発過程において、多種多様である移動床下の氾濫流の抵抗則例を論じ、氾濫水密度の水理実験で得られた諸データを用いて移動床下の氾濫流の摩擦損失係数を例示した。土砂の流水断面平均濃度を測定する水理実験や推定する現地調査を実施するならば、この評価法は津波氾濫流に限らず土砂を含むいろいろな氾濫流、例えば河川氾濫流にも適用可能なものである。 津波の再現・想定計算や歴史津波の規模評価に関係する津波の遡上距離、土砂堆積距離、土砂堆積厚の氾濫水密度への依存性については、より実際的なデータを得るために水理実験を継続し、氾濫水密度と土砂水遡上距離/清水遡上距離、土砂堆積距離/土砂水遡上距離、平均土砂堆積厚/土砂堆積距離の関係を検討して、既提案式の有用性を確認した。 津波荷重の氾濫水密度への依存性については、土砂水と清水を用いた水理実験に基づき、氾濫水密度と波周期のRC造建築物に作用する水平力と鉛直力への影響を検討した。土砂水による水理実験と両水による水理実験結果の比較・検討法が限られているが、氾濫水密度と波周期がRC造建築物に作用する津波荷重へ影響することを実証し、建築物前面浸水深や前面浸水深係数(前面浸水深/入射氾濫水深)が同じ場合、(1)水平力は、氾濫水密度が高くなれば、波周期に関係なく大きくなり、波周期が長くなれば、頭打ちとなるが大きくなる、(2)鉛直力は、氾濫水密度が高くなれば、波周期が長い場合には大きくなり、波周期が短い場合には建築物模型周りの土砂堆積の状況次第で小さくなる場合があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
津波氾濫水の密度については、水理実験を実施し、入射フルード数や入射氾濫水深、氾濫水密度を定量的に評価し、土砂の中央粒径をパラメータとして氾濫流の入射フルード数と氾濫水密度の関係を検討している。また、入射フルード数と土砂粒径に基づく氾濫水密度の簡易評価法を提示しており、当初予定より実験ケースが少ないことを除けば、ほぼ予定通りに研究は進展している。 津波の遡上距離、土砂堆積距離、土砂堆積厚の氾濫水密度への依存性については、水理実験水路の水平部に続く短い上り斜面に続けて粗度増を目的として砂を貼付けた緩斜面固定床を設置した条件において氾濫流実験を実施し、氾濫水密度と土砂水遡上距離/清水遡上距離、土砂堆積距離/土砂水遡上距離、平均土砂堆積厚/土砂堆積距離の関係を検討してきており、ほぼ予定通りに研究は進展している。 津波荷重(水平力と鉛直力)の氾濫水密度への依存性については、水理実験水路の水平部に続く短い上り斜面に続けて粗度増を目的として砂を貼付けた水平固定床または砂を貼付けていない水平固定床と建築物模型を設置した条件において土砂水と清水の氾濫流実験を実施し、建築物前面における浸水深、前面浸水深係数、入射フルード数のそれぞれが同じ場合において、RC造建築物に作用する津波荷重が氾濫水密度や波周期に依存することを実証している。また、建築物周りの土砂堆積状況は波周期や土砂粒径次第で異なるが、土砂堆積が建築物前面の水平力を受ける受圧面積に影響しないこと、建築物前面における堆積土砂の粒径は氾濫前のものとほぼ同じで、背面ではやや小さめであることも確認しており、当初予定より実験ケースが少ないことを除けば、ほぼ予定通りに研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、最終年度(令和元年度)は水理実験を実施せず、前年度までに得られた実験データ(氾濫水密度、遡上距離、土砂堆積距離、土砂堆積厚、津波荷重)の総合的な取りまとめを行い、津波荷重と津波規模評価の高度化方法の提案および研究成果の取りまとめに続き、社会への研究成果の還元方法を検討する。特に津波荷重と津波規模評価の高度化方法の提案を重点的に推進することにする。研究成果を査読論文(土木学会論文集B2(海岸工学))へ投稿し、公表する。さらに、市民講座などにおいて研究成果をわかり易く国民に発信する。 これらの推進において問題となるものは特にない。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は人件費・謝金が当初予定より少なく済んだためで、次年度では消耗品を購入するのに使用させて頂きます。
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