研究課題/領域番号 |
17K01321
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
鎌滝 孝信 秋田大学, 地方創生センター, 准教授 (50631280)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 古津波 / 古地震 / 日本海東縁 / 地質調査 |
研究実績の概要 |
北東北の日本海側では,19世紀から20世紀にかけて1983年日本海中部地震など,マグニチュード7を超える地震が発生し,津波による被害を受けてきた.しかしながら,17世紀以前になると,歴史記録では当地域の地震,津波の情報はほとんど追跡することができない.本研究では,東北地方日本海側において,過去に発生した津波の発生時期や間隔および規模などを評価し,日本海東縁部における地震活動を解明するための基礎資料を整備することを目的とする. 平成30年度には,青森県から山形県において津波堆積物調査を実施した.現地調査は主に秋田県にかほ市および山形県遊佐町の2地域でおこない,長さ2m程度の堆積物試料を複数採取した.また,青森県五所川原市と秋田県八峰町にて,平成29年度の補完調査をおこなった.採取した堆積物試料は,その粒度,堆積構造,含まれる化石,地層の境界面の形状などに基づいて層相を記載し,それぞれの地層が形成された堆積環境を推定した.その結果,それぞれの地域から過去の津波によって形成された可能性のあるイベント堆積物を見出した.さらにそれぞれのイベント堆積物の上下の地層に含まれる植物遺骸の年代測定をおこない,イベント堆積物の形成年代を推定した.平成29年度には,青森県の2地域では17~18世紀に,秋田県北部では13~15世紀に津波堆積物を陸上に形成するような規模の津波が遡上していた可能性を明らかにしている.平成30年度は,秋田県にかほ市では11~12世紀および14~15世紀ないしそれ以降に形成された津波堆積物に加え,それ以前の洪水によって形成された堆積物が見出された.また,山形県遊佐町では,1833年の地震津波によって形成された可能性がある堆積物とそれ以前の洪水によって形成されたと考えられる堆積物が見出された. これらの研究成果は,学会にて発表し査読付論文として出版および投稿済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は青森県の2地域と秋田県の1地域の計3地域で調査を実施し,平成30年度には青森県の1地域,秋田県の2地域および山形県の1地域で調査を実施した.現在までに全ての地域から津波堆積物の可能性がある堆積物を識別し,それらの形成年代を明らかにすることができた.また,平成31年度に実施を計画している調査地域についても下見等をおこない,実施の目処をつけている.したがって本研究課題としては,当初の計画通りの進捗と考える.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,青森県から山形県にかけての沿岸低地を対象に補完調査をおこなう.採取する試料は平成29~30年度に実施した分析・解析項目に加え,微化石分析やX線CTによる解析等をおこなう予定である.当初の計画通り,現地調査は平成30年度までにほぼ完了しており,青森県,秋田県および山形県における津波堆積物の時間的,空間的分布から,日本海東縁部特に青森県から山形県における津波の発生時期や履歴および浸水範囲について検討するための基礎データを整理し,研究の取りまとめをおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施した調査において,微化石や火山灰等の試料分析が当初の予定数量に満たなかったため,次年度使用額が発生しました.次年度使用額については,2019年度分の助成金と合わせて,今年度調査の試料分析費として使用する計画です.
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