研究課題/領域番号 |
17K01323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄治郎 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30392939)
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研究分担者 |
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 教授 (80178384)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火山 / 火山噴火 / 降灰 / 乱流混合 / 防災 |
研究実績の概要 |
爆発的火山噴火における噴煙挙動の再現を目的に、3次元数値シミュレーション研究を推進した。平成30年度は、様々な瞬間的爆発噴火事例の噴煙ダイナミクスと火山灰輸送のシミュレーションを行うとともに、スケーリング則の抽出を試みた。 瞬間的爆発噴火の噴煙ダイナミクス計算に関して、昨年度に引き続き、噴火継続時間、噴出率、噴出速度、火口半径を変化させた計算を行った。昨年度は、瞬間的爆発噴火の噴煙高度と噴火条件の関係がこれまでの単純なスケーリング則では成り立たないことが示唆されていた。平成30年度は、計算実行時間のかかる小規模な瞬間的爆発噴火のシミュレーション事例を増やし、昨年度得られた傾向を検証した。その結果、火口径で規格化した噴煙高度がリチャードソン数のみならず流体の循環に依存することを確認した。また、このスケーリング則が連続噴火の場合と異なる傾向を観察した。 瞬間的爆発噴火の火山灰輸送シミュレーションに関して、噴煙上昇に伴う火山灰の上昇・噴煙からの離脱・風による輸送・地表への堆積の再現を試みた。桜島火山で近年頻繁に発生する小規模な瞬間的爆発噴火を対象とした大規模シミュレーションを実行した。様々な規模、噴火条件で、火山灰が粒径毎に異なる高度で噴煙から離脱し、堆積位置が異なる様子を捉えることができた。 実際の噴火事例の再現を目指し、御嶽山2014年噴火事例を対象としたシミュレーションを実行した。この噴火は水蒸気爆発であり、噴出温度の推定が難しい。そこで、噴出温度を100℃から800℃まで変えたパラメータ・スタディを実行した。計算の結果、噴出物に含まれる水蒸気量を10質量%と仮定した場合には、噴出温度が300℃程度の時に実際に観察された火砕流発生や噴煙高度を説明できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型計算機を用いた噴煙の再現計算に関して、瞬間的爆発噴火の様々な事例に関して計算を行い、噴火条件と噴煙高度のおおよそのスケーリング則の傾向を掴むことができた。また、御嶽山2014年噴火事例の再現計算も実行し、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
様々な噴火事例のシミュレーション結果を順調に蓄積できており、今年度も大型計算機を用いた広範なパラメータ・スタディを推進する。平成29・30年度は主に火口半径や噴出速度を変えた計算結果を蓄積したが、今後は他のパラメータを変えた計算も行う。それによって、噴出条件と噴煙高度のより一般的な関係(スケーリング則)の確立を目指す。特に、本年度に捉えた流体の循環に注目したパラメータ・スタディを行う。このスケーリング則抽出の研究は、本件を基研究として平成30年度から開始している国際共同研究加速基金プロジェクトと連携している。現在進めているフランスIPGPグループとの室内実験研究と併せることで、スケーリング則の検討を行う。また、火山灰輸送データの解析を本格的に行い、噴火条件・火山灰粒径と堆積位置の関係性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を基研究とする国際共同研究加速基金プロジェクトでは室内実験を行うことにより、本研究を補完している。その室内実験研究での装置作成・試験的実験に重きを置き、本件での数値シミュレーションは大まかな傾向を掴むことに集中した。そのため、予定より保存データ量が減少し、保存用ハードディスクの購入数を抑えたことにより次年度使用額が生じた。 次年度は、本年度に把握することのできた重要なパラメータについて注目した数値計算を実行する。その解析のための計算機とハードディスクの購入、また研究成果発表に充てる予定である。
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