研究課題/領域番号 |
17K01324
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山中 浩明 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 波形逆解析 / 地震記録 / 深部地盤 / 基盤構造 / S波速度 / 微動探査 / 位相速度 |
研究実績の概要 |
平野部の直下に存在する活断層では,地下構造が急変することが多く,その周辺では地震動の空間変動も大きくなる。この研究では,断層近傍での中小地震の記録から深部地盤の不整形性を同定する方法を開発することを目的としている。 平成29年度には、深部地盤構造の変化が大きいと考えられる盆地端部での地盤構造のモデル化に関する検討を行った。とくに、地盤同定を実施する前の地震記録の処理方法についても検討した。笠松ほか(2016)による方法を用いて、盆地端部の観測点を含む首都圏西部で得られた地震記録を分析し、同定に用いる長周期地震動、とくに表面波成分の抽出を行った。その結果から、同定に用いる地震記録の周波数帯域と波形のセグメントを観測点毎に決めた。これら観測データに対して、波形逆解析法(笠松ほか、2015)を適用し、基盤の露頭地域から平野中心部までの深部地盤構造モデルを同定した。得られたモデルは、最近の調査研究による深部地盤構造モデルに近いものであった。適切な前処理を地震記録に適用することによって、既往の波形逆解析手法でも盆地端部の深部地盤構造モデルの同定に使用できる可能性があることを示した。 本年度は、過去の被害地震の断層近傍でのデータを取得するために、2004年の中越地震の断層近傍の小千谷市において微動探査および微動連続観測(数日間)を実施した。微動探査は、Yamanaka et al. (2006)による余震観測点付近で実施され、レイリー波の位相速度から表層地盤のS波速度情報を得た。さらに、余震観測記録と表層地盤の関係についてを検討し、表層地盤だけでは余震記録の特徴が十分に説明できず、深部地盤の影響も加味する必要性を示した。また、微動の連続観測記録には、小地震による地震記録も含まれており、今後の波形逆解析法の開発に使用できるデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地盤同定手法の開発では、同定に用いる地震記録の前処理を行うことで既往の波形逆解析プログラムが本研究の目的にも適用可能であることを明らかにできており、本研究の第一段階を完了できたと考えている。また、2004年中越地震の被災地域での現地調査を実施し、今後の研究のためのデータを取得できたことも評価できる点であると考えられる。しかし、今年度の検討では、表面波成分を用いた方法が使われており、S波成分も含めた波形逆解析方法の適用性については、今後も検討すべき点である。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査結果の分析をさらに進め、本研究での波形逆解析法の適用性の検討を早期に行うことが重要である。その結果を踏まえて、必要に応じて再度現地調査を実施するなどの必要がある。とくに、微動連続観測で得られた地震記録が微小な振幅レベルの記録であることから、S/N比の問題で使える周波数範囲が狭くなることも懸念される。その場合には、より長い期間の連続観測を実施するなどによって、より品質の高いデータを取得し、本逆解析法の確立を目指す必要がある。
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