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2019 年度 実施状況報告書

断層岩に含まれる粘土鉱物の生成年代を指標とした断層活動性評価法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K01326
研究機関山梨大学

研究代表者

福地 龍郎  山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90212183)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード活断層 / 断層ガウジ / 粘土鉱物 / スメクタイト / 熱水反応 / フェリ磁性鉱物 / ESR / FMR
研究実績の概要

前年度までに糸静線活断層系白州断層の国界橋露頭(山梨県北杜市小淵沢町)から採取した断層ガウジ試料を用いて,ESR年代測定を実施した。ガンマ線照射実験の結果,断層ガウジ中に含まれる粘土鉱物(スメクタイトの一種であるモンモリロナイト)起源のESR信号は飽和傾向を示して年代値を求めることはできなかったが,石英の不純物中心であるAl中心は規則的な増加傾向を示し,0.47±0.09Ma(決定定数98.3%)という年代値が得られた。その結果,国界橋露頭における白州断層の活動年代Tは,T<=0.47±0.09Maと見積もられた。本露頭の白州断層は中期更新世に堆積した教来石礫層の上に衝上しており,教来石礫層は黒富士火砕流と韮崎岩屑流の間に不整合で挟まれていることから0.5-0.2Maの間に堆積したと推定され,教来石礫層堆積後に活動している白州断層の活動年代は,今回得られたESR年代値と矛盾しないことが明らかになった。本露頭の断層ガウジからはスメクタイトが検出されることが判明しており,活動性が未認定の断層が活断層かどうかを判定する際に,断層ガウジ中にスメクタイトが存在するかどうかが一つの指標になり得ることが示された。
野島花崗岩粉末試料を用いた熱水反応実験(240℃加熱)で得られた試料の詳しいESR解析を実施した結果,熱水反応で新たに生成されたフェリ磁性鉱物起源のFMR(フェリ磁性共鳴)信号の特徴が,断層活動時に摩擦熱による熱水反応の影響を受けたと考えられている台湾チェルンプ断層の断層ガウジから検出されるFMR信号の特徴と一致することが判明した。このFMR信号は,ガンマ線照射により増大することも新たに判明した。一方,年代測定に利用できるモンモリロナイト四重信号はガンマ線照射後も検出されず,新たに実施した450-500℃の熱水反応実験後にガンマ線照射した試料からも四重信号は検出されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究代表者は,平成30年度から山梨大学教育学部附属小学校校長を兼任しており,通常の大学業務に加えて,附属小学校校長の業務を日常的に行っているが,平成31年度(令和元年度)は,全国国立大学附属学校連盟副理事長及び校園長会副会長に就任し,常設委員会である学校運営委員会の委員長を務め,アンケート調査の実施,結果の解析及び報告書の作成を行ったため,科研費研究の時間を十分に確保できず,当初計画に遅延を来した。なお,科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認の申請を行い,令和2年度までの期間延長が承認された。

今後の研究の推進方策

令和2年度は,これまで採取された断層ガウジ試料のESR解析及びXRD分析を引き続き実施し,加熱により増大する石英E’中心及びperoxy中心の信号強度と粘土鉱物のXRD強度(結晶度)の相関関係を調べる。さらに,各断層ガウジ試料から検出される石英及び粘土鉱物起源の各ESR信号(Al中心,Ti中心,モンモリロナイト四重信号など)を用いて年代測定を実施し,各ガウジ試料から検出される粘土鉱物の種類やXRD強度(結晶度)との相関関係について検討する。
一方,高温高圧反応容器を使用した熱水反応実験については,これまで採取した断層岩の母岩試料(花崗岩)を用いた実験を継続する。特に,加熱温度及び時間が異なる複数の条件下で熱水反応実験を行い,生成した粘土鉱物の同定と結晶度の算出をXRD分析により実施し,各粘土鉱物が生成あるいは共存する温度と時間の関係式(アレニウス式)を求めることを目指す。また,断層岩試料採取地点の地温勾配及び隆起速度データとアレニウス式から各粘土鉱物の生成年代を見積もる。更に断層岩からモンモリロナイト固有の四重信号が検出される場合には,ESR年代測定を実施し,粘土鉱物の生成年代とESR年代値の比較検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

平成31年度(令和元年度)は,通常の大学業務と山梨大学教育学部附属小学校校長職に加え,全国国立大学附属学校連盟副理事長及び校園長会副会長に就任し,常設委員会である学校運営委員会の委員長を務め,アンケート調査の実施,結果の解析及び報告書の作成を行ったために,科学研究費研究の時間を十分に確保できず,当初計画に遅延を来した。
次年度使用額については,令和2年度に分析する断層ガウジ試料からイライトが検出された場合にK-Ar年代測定の外注費用として使用する他,実験装置の消耗品費用やESR年代測定を実施する際に必要となる年間線量率を算出するための放射性元素濃度の定量分析費用として使用することを計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 甲府盆地の形成過程に関する一考察2020

    • 著者名/発表者名
      福地 龍郎
    • 雑誌名

      山梨大学教育学部紀要

      巻: 30 ページ: 103-119

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Dating of the Yamada fault distributed on Tango Peninsula using radiation defect radical centers Part 22020

    • 著者名/発表者名
      Tatsuro Fukuchi
    • 雑誌名

      QST Takasaki Annual Report

      巻: 2018 ページ: 112-112

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 熱水生成鉱物起源ESR信号のガンマ線照射効果と断層年代測定への応用その12020

    • 著者名/発表者名
      福地 龍郎
    • 雑誌名

      2019年度日本原子力研究開発機構・量子科学技術研究開発機構施設利用共同研究一般共同研究成果報告書

      巻: 19009 ページ: 1-4

    • オープンアクセス
  • [備考] 糸魚川-静岡構造線の研究

    • URL

      http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~tfukuchi/sub3.htm

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公開日: 2021-01-27  

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