研究課題/領域番号 |
17K01330
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
吉村 晶子 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50356052)
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研究分担者 |
佐藤 史明 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50286150)
寺木 彰浩 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (70370707)
小山 真紀 (田原真紀) 岐阜大学, 学内共同利用施設等, その他 (70462942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 捜索救助医療活動 / 人的被害 / 災害対応 / 訓練 |
研究実績の概要 |
災害による人的被害に関する調査研究報告はこれまで数多くなされてきたが、その多くは死者の発生状況等に注目しており、捜索救助医療活動事例データ、特に、詳細な現場状況に至るまでの記録はこれまでほとんどなく、またその基本データも明確ではない。本研究は、要訓練スキルの特定、活動・訓練要領の標準化、効果・効率・定着率が高い訓練内容・方法による教育訓練カリキュラムの開発による災害対応力向上のため、エビデンスとなり得る捜索救助医療活動データの収集、基本データの特定、今後の記録のためのデータ・フォーマットの作成を行ない、教育訓練カリキュラムの確立と更新システムの構築をめざす。平成29年度においては、平成28年熊本地震における救助事例を調査し、活動対象建物、現場状況、活動過程、適用技術を明らかにした。当該地震は、前震があったのちに本震が発生する被害地震であったため、前震で出動した千人規模の活動者が本震前夜までに既に熊本入りしており、本震直後から捜索救助活動に出動した。倒壊家屋における閉じ込めの詳細や、現場に応じた救出救助に関する情報は、これまで充分な情報を収集することが難しかった。これは、被災直後には被災地域内にいる救助スキルを持った人材が限られていること、救助活動情報はプライバシーに関して繊細な情報を含むため、救助活動実施者からの協力が得られにくいということがある。しかし、熊本地震はこの2つの問題を解決できた非常に貴重な機会となった。この機会を活用して、継続的に情報の収集を可能とするための基盤となる調査票の開発,開発された調査票を用いたデータ収集調査、得られたデータに基づく救出救助活動の体系整理を行った。予備調査の結果、救助活動のプロセスと基礎データは大きく11の項目に分けられた。本調査の結果、11の項目のそれぞれについて所要時間、資機材、用いた手法、要救助者の状況などの詳細を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は①災害救助活動事例のデータ収集整理、②要訓練スキルの抽出、③スキルの構造化・スキル項目の重要度決定を行なう研究計画に従い取り組んできた。①災害救助活動事例のデータ収集整理については、これまでかつて得られなかった内容、精度のデータが救助プロセスの全ステップにわたり収集できた。また熟練訓練指導者へのエキスパート・ヒアリングにより、救助の基本データとなると考えられるデータ項目および救助プロセスを整理することができた。②要訓練スキルの抽出については、よい精度での一定数の活動事例データが①により収集・整理できたことで、木造倒壊家屋での救助活動における要訓練スキルの抽出・把握ができた。③については、完了に至っていないが、検討を進めているところである。以上より、現在までの進捗状況としておおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は④スキル獲得訓練プログラムの設定、⑤設定したスキル獲得訓練プログラムの実施と検証を行なう予定である。④については、平成29年度に得られた活動事例データに基づき組み立てていく作業を主として行い、設定していくが、既往の訓練プログラムの収集把握、既往訓練と実際の活動事例データの比較、現場出動隊員や訓練指導者らへのヒアリングなども併せて行い、より実効性・実現性の高い訓練プログラムの設定をめざす。⑤については、当初計画ではオンサイトで使用できるアイトラッカーによる検証を検討していたが、センサーによる検証方法では視線以外も含めた方法の検討、判断スキルなどのメンタルスキルも含めたアンケート等による方法なども含めて随時検討を重ね、継続的な訓練向上をしていけるよう標準化することも視野に再度検討し、実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成29年度にオンサイトで使用できるアイトラッカーを購入し、平成30年度にそれを用いた検証を行うこととしていたが、継続的な訓練向上をしていけるよう標準化された訓練効果の測定方法も検討すべきではないかと考え、視線以外も含めたセンサーによる方法の再検討、オフサイトでの視線計測などの代替的方法の検討、判断スキルなどのメンタルスキルも含めたアンケート等による方法なども含めて検討を重ねていくこととした。以上の検討に十分な時間を確保するため、機器購入等は平成30年度計画における検証実施時期までに行うこととし、平成29年度内には購入しなかったため、平成29年度に未使用額が生じた。使用計画としては、上述の検討により決定した検証方法の実施に必要な機器等の購入、また、8.にて前述のとおり、訓練プログラムの設定検討において、当初計画していた活動事例データに基づく検討に加え、既往の訓練プログラムの収集把握、既往訓練と実際の活動事例データの比較、現場出動隊員や訓練指導者らへのヒアリングなども併せて行うことがより実効性・実現性の高い訓練プログラムの設定につながると考え、これを実施していくことに使用する予定である。
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