重点的に取り組んでいる吾妻山では、可搬型のマルチガス装置による火山ガス成分比の観測、可搬型土壌ガス装置による二酸化硫黄放出率観測を実施し、火山体におけるマッピングを実施した、一方、大穴火口の火山ガス活動に伴う地殻変動を把握するため、平成29年度に設置した光波測距観測点による繰り返しの測距観測を引き続き実施するとともに、火口近傍においてGPS繰り返し観測で山体変動を把握した。また、山腹に設置した既存の土壌ガス(二酸化炭素)連続観測データとも照らし合わせた。昨年度まで明らかにした2018年夏頃の地殻変動及び大穴火口の火山ガスの成分比(SO2/H2S)の変動に加え、二酸化炭素の土壌ガス放出率が増加した傾向も検出した。二酸化炭素土壌ガスの放出率が火山活動に伴うものであるとしても、火口近傍の火山ガス成分比や地殻変動と離れているため、火山深部をソースとするガス活動とはことなる、熱水系の環境変化による可能性もあるが、異なる観測手法で同時期に検知された変動を山体内部の圧力変化等とともに統一的に解釈できるモデル検討中である。 一方、同様の視点において観測を継続した九重山においては、光波測距による地殻変動観測とセンサーによる繰り返しの火山ガスの成分比観測を実施しているが、顕著な変動を捉えられなかった。 しかしながら、可搬型のマルチガスセンサーの繰り返し観測を、吾妻山、九重山の他、雲仙岳、草津白根山、霧島山硫黄山及び新湯の多数の噴気孔ガスで実施し、得られた二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄の3成分の相対濃度から、Stix and De Moor(2018)の相関図にプロットすることで、それぞれの火山、および火山の領域において、マグマ性~熱水性の相対関係を示すことができた。今後これに地球物理学的特性を加えることで、化学成分と物理的変動を融合した活動度評価の可能性について検討を進めることが可能となった。
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