研究課題/領域番号 |
17K01333
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研究機関 | 公益財団法人鉄道総合技術研究所 |
研究代表者 |
津野 靖士 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 鉄道地震工学研究センター, 副主任研究員 (50644738)
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研究分担者 |
山中 浩明 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 堆積平野 / 北摂地域 / 地震動の方位依存性 / 単点微動測定 / H/Vスペクトル比 / 地震動シミュレーション |
研究実績の概要 |
堆積平野/堆積盆地の地下速度構造に対する不均質性を評価することを目的として、北摂地域の堆積盆地を本研究の調査地として選定した。北摂地域は千里丘陵および芋川低地、北摂山地から構成され、複数点の地震観測データから複雑な地下構造による地盤震動特性が報告されている。北摂地域では、反射法探査とアレー微動探査の結果から、芋川低地と千里丘陵を縦断する測線下の2次元地下速度構造が推定されている。そこで、本研究では、その地下速度構造を利用して2次元の地震動シミュレーションを行い、地震データと比較・検討することにより、推定された2次元地下速度構造の妥当性について検証した。一方で、北摂地域では地震動の方位依存性が指摘されており、観測された地震データを利用して、北摂地域における地震動の方位依存性について検討した。その結果、周波数1Hz以下の長周期成分については、EW成分のスペクトル比の方がNS成分のそれよりも大きく増幅していることが分かった。幾つかの地震では、EW成分の長周期成分が顕著に卓越しているが、地震動の波動成分の違い(Love波やRayleigh波)により、堆積盆地内での地盤増幅が大きく異なることが示唆される。北摂地域の強震動予測を正確に予測するためには、3次元の地震動シミュレーションが必要であり、3次元の堆積盆地S波速度構造モデルを作成することを目的として、2km四方の範囲において合計51地点で単点微動測定を新たに実施した。その結果、本測定の対象地域に限定されるものの、北摂山地と千里丘陵に挟まれた芋川低地は円筒状の盆地形状で構成されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本テーマの研究開発では、“リファレンス観測点の地震記録を利用して、長周期地震動と高層建築物応答をリアルタイムで予測する手法を開発する”ことを主目的としている。上記「研究実績の概要」に示したように、地震動の方位依存性が指摘されている北摂地域を選定し、地震動の入力方向によりリファレンス地点―対象地点に対して、周期2~3秒の地震応答が大きく変化することを示した。また、関東平野についても、関東平野周辺で発生した地震によるリファレンス地点―対象地点の地震応答の変化を確認しており、異なる2地域に対する地震動の方位依存性に対する相違について、対象周期帯や地下構造モデルをもとに、検討している次第である。 北摂地域と関東平野の長周期地震動を半経験的手法から予測する際は、リファレンス地点の選定がキー・ポイントとなるが、北摂地域においては盆地形状が円筒状であり、リファレンス地点を比較的単純に決めることができそうである。一方で、関東平野は面的に複雑に広がっているため、リファレンス点の選定に感度評価を行うなどの工夫が必要であり、現在、検討している次第である。
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今後の研究の推進方策 |
堆積平野の地震波伝播を考慮して、リアルタイムに対象地点の地震動を予測するためには、「現在までの進歩状況」に示した、異なる2地域に対する地震動の方位依存性に対する相違とリファレンス地点の選定を解決することが重要であり、引き続きそれら検討を進める。一方で、本テーマ名 “堆積平野の地震波伝播を考慮した建築物のリアルタイム地震応答予測”の建築物の地震応答については未検討のため、共同研究者と研究の方針を調整する。まずは、東工大・すずかけ台キャンパスの高層建築物に設置された地震計で観測された地震記録を収集・整理し、その後、その高層建築物で微動測定を行い、建築物の振動特性を評価する予定である。さらには、微動データから評価した建築物の振動特性を利用して、高層建築物の地震応答を予測し、得られた予測結果と観測データを比較・検討し、その整合性の度合いによりモデルの修正を行う。
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