研究課題
本研究では、新宿駅周辺地域をケーススタディとして、震災・水害に起因する複合災害を対象にオールハザード・アプローチによる危機対応モデルを構築することが目的である。平成30年度は前年度の被害予測結果をもとに、米国のオールハザードの危機対応システム等を参考に、新宿駅周辺地域をモデルケースに災害対応計画を検討した。具体的には、米国のNational Response FrameworkのEmergency Support Functionsを参考に、東京都および新宿区の地域防災計画の震災対策計画・風水害対策計画・大規模事故等対策計画をオールハザード・アプローチの観点から検証し、共通の災害対応項目・活動フェーズごとに、それぞれの活動項目を整理した。その結果、新宿駅周辺地域の災害対応計画は、災害対策本部の組織・運営、通信の確保・情報の収集、情報の伝達、応援の受入、広報・広聴活動、消火・救助・救急活動、保健衛生、避難所等・被災者の生活対策、特別な配慮が必要な人への対策、物資等の輸送・供給対策、ボランティアとの協働活動、公共インフラ被害の応急処置等、生活再建支援、廃棄物処理、交通・輸送・警備、駅周辺の混乱対策の16の共通する災害対応項目と、発災・初動・応急・復旧の4つの共通する活動フェーズに分類できることを明らかにした。そして、対応項目・活動フェーズ別に各主体の活動内容を整理し、さらに、活動内容ごとに必要な担当部署・組織や活用資源をとりまとめた。また、計画に基づいて、地域内の災害活動拠点が連携した災害対応が行えるよう、米国のインシデント管理システムの考え方を参考に、西口現地本部・一時滞在施設・避難場所を対象に運営等に関わるマニュアルと支援ツールを開発した。これらの成果は、新宿駅周辺防災対策協議会の講習会・地域連携訓練において試験的に活用し、効果と課題を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画では、平成30年度は、昨年度の被害予測結果を踏まえ、米国のオールハザードの危機対応システム等を参考に、新宿駅周辺地域の災害対応計画の策定を目標とした。上記の研究実績の概要のとおり、オールハザード・アプローチの観点から既存の防災計画を検証した結果、新宿駅周辺地域の災害対応計画は16の対応項目・4つの活動フェーズに分類できることを明らかにし、さらに各主体の活動内容ごとに必要な担当部署・組織や活用資源を整理することができた。また、計画に基づいた災害対応を効果的に行えるようにするため、災害活動拠点の災害対応マニュアルと支援ツールも開発した。これらの成果は、新宿駅周辺防災対策協議会の講習会・地域連携訓練において試験的に活用し、効果と課題を明らかにした。
平成31年度は、平成30年度に策定した計画及びマニュアル・支援ツールを新宿駅周辺防災対策協議会の地域連携訓練等に適用し、それらの効果検証を行う。最終年度となる平成32年度には、本協議会の総意のもとで新宿駅周辺地域の災害対応計画として社会実装の準備を進めつつ、研究成果をまとめる。とくに最終年度の協議会の総会(6月予定)において事業者等から総意が得られないことも想定されるが、その場合には総会での意見を可能な限り反映したモデルへと改良し、最終年度の11月実施予定の地域防災訓練で改めて効果検証を行い、実装を進める。
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Journal of Disaster Research
巻: Vol.14 No.2 ページ: 387ー404
第15回日本地震工学シンポジウム論文集
巻: - ページ: 2228-2236
巻: - ページ: 3072-3081
巻: - ページ: 3065-3071