研究実績の概要 |
発生が危惧される想定首都直下地震では最大61万棟,南海トラフ巨大地震では最大239万棟の住家全壊が見込まれており,甚大かつ長期的な広域避難のリスクが懸念され,政府や自治体で検討課題となりつつある.本研究は,想定大規模地震後の仮住まい対策を対象として,被災者の選択を予測するモデルを構築してミクロシミュレーションを行い,事前検討や準備に資することを狙いとしている. 令和元年度は,想定首都直下地震について,収集したデータや構築した需要予測モデルを用いたミクロシミュレーションの構築を行い,概ね作業が完了した.シミュレーションは,Sato(2011)を基調としたものであるが,半壊や応急修理の扱いの追加,借上型仮設住宅の扱いの追加,「公的統計調査の調査票情報等の学術研究等への活用」制度による国勢調査の調査票情報の利用,データ入出力管理機能の整備などの作業を加えた.また,想定南海トラフ巨大地震についても,やや簡略化して同じ内容の作業を行なった. 本研究をベースに,令和元年度より開始した東京都の「大学研究者による事業提案制度」で採択された「仮設住宅不足への対応準備」事業を通じて,シミュレーション結果や被災地の情報などを用いた都民ワークショップを6度行い,さらに有識者や関連団体を集めた検討会を行った.ワークショップや検討会での議論をとりまとめ,住民向けの災害後の仮住まいに関する簡易な広報物を作成し,令和2年4月に都庁HPより公開された.
Sato(2011)「Microsimulation of Temporary Housing Situation following Urban Disaster」, Social Science Computer Review, Vol. 29, No.1, pp.103-126.
|