本研究は,想定地震(首都直下地震及び南海トラフ巨大地震)後の仮住まい対策を対象として,被災者の選択を予測するモデルを構築してミクロシミュレーションを行い,多様な世帯状況に応じた迅速で安心な仮住まいのための方策を明らかにすることを目的としたものである.平成29年から令和元年にかけて,首都直下地震及を対象に,シミュレーション用のミクロデータの整備,被験者の属性や意向に対応したインタラクティブなインターネット調査による仮想選択行動データの収集と離散選択分析,それらを用いた仮住まい対策のミクロシミュレーションの構築を完了した.同時に,南海トラフ巨大地震を対象としたシミュレーション構築にも着手し試算を行なった. 最終年度は,本研究をベースに提案し採択された東京都「大学研究者による事業提案制度」の「首都直下地震時の仮設住宅不足への対応準備」事業(令和元年~2年度)において,シミュレーション結果や都民ワークショップの結果などについて,有識者や関連団体を集めた検討会を行い,政策提案レポートを取りまとめた.同レポートは,令和3年3月末に都庁HPより公開された.同レポートの本文冒頭には,本研究で実施したミクロシミュレーションの結果が記載され,「東京仮住まい」啓発事業の推進や広域仮住まい先との事前交流など提案背景となった.また,シミュレーションの設計や計算結果等について,学術論文として取りまとめて投稿を行なった.
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