本研究では、3次元水分移動モデルに凍結過程を組み込むとともに、積雪変質モデルと3次元水分移動モデルの双方の長所を融合することを目的としてきた。 その融合にむけて、これまで行ってきた水分浸透実験を検証データとして、積雪変質モデルと水分移動モデルの比較を行った。その結果、双方とも同様の過程で水分が浸透していくこと、また全体的には3次元モデルの方が再現性が高く、積雪変質モデルの精度向上にむけた改良に応用可能であることが確認された。この結果は、国際誌のHydrol. Earth Syst. Sci.に掲載されている他、国際雪氷科学ワークショップ(ISSW)でも発表している。 また、乾き雪が卓越した状態からぬれ雪卓越した状態への遷移過程に関して、3次元水分移動モデルを用いて室内実験の結果を再現した。水みち部分は湿雪になるため粗大化して毛管力が低下し、その結果細かい乾いた雪に水が浸透しやすくなって新たな水みちが作られやすくなり、それが水みち領域の拡大につながることを実験結果と合わせた計算により解析した。この結果は国際誌であるGeophys. Res. Lett.に投稿し、掲載された。 また、水分移動モデルに温度や凍結のパラメータを導入し、積雪中の水分が氷点下の積雪内に浸透した際に再凍結とともに周囲の温度条件が大きく変わるプロセスを再現可能にした。 このモデルとの比較のため、-5度の土壌に水を1時間あたり10mm浸透させた実験を行い、浸潤水の2割程度が凍結したが、温度や水分分布の給水速度依存性は小さかった結果が得られた。またフレークアイスに水を浸透させた実験を行い温度や含水率のプロファイルを得た。これらの条件に近い形で3次元水分移動モデルで計算を行い、浸透や凍結過程に関して定性的に一致した傾向が確認された。
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