研究課題/領域番号 |
17K01348
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
星野 大介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60391182)
|
研究分担者 |
野口 宏典 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353803)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 津波線流量 / 数値実験 / 流体力指標 / 空中写真 / 立体視 / 林分構造 / マツ / 浸水高 |
研究実績の概要 |
海岸林が津波減勢効果を発揮した実態を評価するため、岩手県宮古市栃内浜海岸林の津波の遡上範囲において1977年まで遡り、震災前の平時の海岸林の成長量と、被災後の破壊・流出量を、過去の複数枚の空中写真立体視により三次元的に把握した。さらに同範囲において、実際の津波の遡上高や遡上距離に到達するよう入力遡上高を調整して一次元的に数値実験により津波線流量や浸水高を推定した。減勢効果を推定したところ、海岸林が存在し続けた場合より、海岸林が存在していない場合の津波遡上距離が約80 m延伸し、遡上高が約4 m高くなることが示唆された。実際には最長遡上点付近以外の海岸林は被災中途で流失したとものと考えられるので、こうした津波減勢効果の数値は実態としてはいくぶん低いものと推測される。こうした栃内浜における研究成果を日本海岸林学会大会で報告した。また長大な沿岸域を抱え津波被害が予測される千葉県からの講演依頼を受け、行政・研究職員を対象とし、2/14に「空中写真を津波被害量と津波低減効果の推定に活用する」のタイトルで研究成果の一部を講演したところ、参加者から高い評価を受けた。 さらに、海岸林と防潮堤等の津波減勢効果を評価する対象地として設定した岩手県田野畑村においても、震災前の平時の海岸林の成長量と、被災後の破壊・流出量を、過去の複数枚の空中写真立体視により三次元的に把握した。 東北地方太平洋沖地震に被災しなかった海岸林の存在する南伊豆の入り江1箇所について、現地踏査と空中写真による立体視を実施して、地形と海岸林の配置を三次元的に把握した。このほか神奈川県茅ケ崎市柳島を解析対象地として検討したが、平坦地形に近いため変更することとした。より有効な入り江を房総半島付近に求めたところ、2カ所の候補地を検出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東北地方太平洋沖地震津波の被害を受けた海岸林による津波減勢効果について、汀線から津波の最長遡上地点までの縦断線上において、数値実験をおこなったところである。しかし対象地がV字状の谷地形であるため、学会発表等において、両側に存在する斜面地形による津波減勢効果の影響も看過できないとの指摘も受けている。周辺空間の地形や海岸林を含む二次元的解析の必要性が生じており、当初、本年度に予定していた海岸林の配置や林分構造を変化させた数値実験は未実施である。一方で研究成果の一部が書籍として公表され、また千葉県の関連行政分野の研修で報告したところであり、研究成果の一部の受け渡しは前倒しで進めることができた。 現在、二次元的な解析について外部の専門家と意見交換を進めており、最終年度の前半中に海岸林の配置や林分構造を変化させた数値実験を実施する見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は前半に二次元的解析の研究体制を確立したうえ、すでに東北地方太平洋沖地震津波により被害を受けた岩手県栃内浜と明戸での津波減勢効果の再解析を最優先に進める。具体的には、河川等での研究が参考になると考えられ、外部専門家に助言と協力を求めている。そのうえ、海岸林による津波減勢効果を発揮するための条件を明らかにするため海岸林や防災施設の配置や林分構造を変化させた数値実験をおこなう。 今後、大型津波の被害が予測される海岸林の研究推進については、南伊豆の入り江1箇所の林分構造の調査と解析を優先しておこなう。 研究成果の論文化を進めるとともに、本基金で得られた研究成果の社会への受け渡しに努めて、かつ、とりまとめをおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度内に、大型津波の被害が予測される2か所の海岸林における林分構造の調査を可能な範囲で実施する予定であったが、予備調査にとどまったため、調査予算を次年度の実施に向けて使用することとした。
|