研究課題/領域番号 |
17K01349
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中里 裕臣 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主席研究員 (00373225)
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研究分担者 |
井上 敬資 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (60414455)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地下水流動 / 地すべり / 比抵抗モニタリング |
研究実績の概要 |
平成30年度は,まず塩水トレーサ流動実測のための観測孔の掘削を5月10日に再開し,5月16日に深度40mまで掘削し,深度10~40mを有効管とする観測孔に仕上げた.6月11日より水位及び水温観測を開始し,水位は11月12日までにGL-15~23mの範囲で変化し,想定された地下水流動部が観測孔の地下水面下にあることを確認した.深度30mにおける水温は4.8℃で一定であり,地下水温として低いのが特徴である. 比抵抗モニタリング実験は,10月25日~28日に実施し,約10m間隔で電極間隔4m,48電極の2次元探査測線を4測線配置し,観測孔から約60m斜面上方のトレーサ投入孔から1000Lの10%食塩水を投入した.瞬時電気探査システムではトレーサ投入開始から6.5時間後まで4測線について10分間隔で9216データの測定を繰り返したが,既往調査では確認された比抵抗低下部は全測線で検出されなかった.一方,トレーサ投入開始後7時間後に実施した従来システムによる電気探査では,投入孔から最も遠い測線で観測孔投影位置よりずれた場所で比抵抗低下部が検出された.観測孔に設置した自記EC計(深度30m,38m)では調査期間中EC変化は認められなかった. 瞬時電気探査システムで比抵抗低下部が確認できなかった原因としては,測定電位が時間経過と共に最大20%増大する傾向が認められ,想定されなかった測定器の不安定な電位計測特性により地盤の有意な比抵抗変化が検知できなかったためと考えた.一方,従来装置では比抵抗低下部が想定とずれた位置に検知され,観測孔ではEC変化が認められなかったことから,塩水トレーサは探査範囲内を流下したものの,進展した地下水排除工の影響により既往調査と異なる場所を流下したと推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
既往調査で地下水流動部が推定された場所で,既往調査の欠点を補うために導入した時間分解能を上げた瞬時電気探査システムによる比抵抗モニタリングを実施したが,有意な比抵抗低下部を検知できなかったため.探査システムの受信電位の安定性に問題があることは想定していなかったため,所内試験を追加実施して,この受信電位の時間依存性のある変動が再現されることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
瞬時電気探査システムについては,電位レベル変動の原因を究明しシステム改修を目指すが,システム改修が困難な場合には,測定電位レベルが測定開始から4時間後には安定することが確認されたため,本測定の4時間前から計測を継続する方法で地すべり現地における再実験を行う.2019年度には再実験と浸透シミュレーションにより地下水流動部の規模及び透水性を定量評価する. 再実験に当たっては,塩水トレーサの挙動を確実に検知するため,観測孔を投入孔として塩水トレーサを投入し,その周辺に配置した探査測線により比抵抗モニタリングを実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費については現地調査の集約化と機材運搬を兼ねた公用車の活用により予定よりも低減し,人件費・謝金については,次年度に比抵抗モニタリングの再実験が必要になったため節約したことから,次年度使用額が生じた.次年度使用額と翌年度分の助成金については,比抵抗モニタリング再実験とデータ解析及び成果のとりまとめのために使用する.
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