研究課題/領域番号 |
17K01350
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤本 明宏 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90456434)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 冬期路面管理 / 路面すべり摩擦係数 / 凍結路面 / 凍結防止剤 / 事前散布 |
研究実績の概要 |
本研究では、凍結防止剤(以下、塩)の事前散布(湿潤路面に散布し、路面凍結を抑制するための散布)の効果を評価するソフトウェア(以下、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェア)の開発を最終目的とする。本課題では、このソフトウェア開発において不足している知見として、「湿潤路面における固形塩の溶解速度」、および「塩溶液の凍結過程における路面すべり摩擦係数特性」を明らかにする。加えて、これらの知見を基に、気象、路面温度、水膜厚、交通、塩散布条件(量と時刻)などを入力すると路面上の氷質量(氷膜厚)と路面すべり摩擦係数の時間変化を予測する手法とソフトウェアを構築する。 湿潤路面における固形塩の溶解速度については、福井大学地域環境研究教育センター低温室において、舗装上に作成した水膜に固相塩を散布し、固相塩の溶解に伴う塩分濃度の上昇を屈折計で測定した。この水膜との接触による固相塩の溶解現象を計算する数値解析モデルを構築し、計算における未知数を固相塩の溶解速度のみとして、実測値と計算値が一致するようにして、固相塩の溶解速度を求めた。 塩溶液の凍結過程における路面すべり摩擦係数特性については、舗装上に作成した水膜に固相塩を散布し、室内を規定温度まで下げて舗装を十分に冷却させ、路面を水・氷・塩混相状態にする。規定時間後、ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスターを用いて路面すべり抵抗値BPNを、屈折計により塩分濃度を、それぞれ測定する。塩分濃度の変化(濃縮)から発生した氷質量を算出し、氷質量とBPNの関係を定式化した。 上記の2つの実験結果を基に凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアを開発した。凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性を評価するために、現道での走行試験を実施した。走行試験では、塩分濃度、水膜厚、路面雪氷状態、路面すべり摩擦係数を走行しながら測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年7月に土木研究所から福井大学に異動した。この異動により、研究実施計画を見直した。本研究は、2つの室内実験、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの開発、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性検証のため走行試験に大別される。 まず、室内実験については、作業を委託する予定であったが、学生が卒業研究として実施することとなり、順調に成果を上げることができた。得られた知見を基に、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアを作成し、骨組みが完成した。 次に、走行試験については、当初は土木研究所が所有の苫小牧試験道路と路面すべり摩擦係数測定車を用いて、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性検証のためのデータを測定する予定であった。しかし、福井に異動によってこの計画は実施不可能になった。そこで、研究計画調書にも計画外の対応として記載したように、走行試験の場所を高速道路に移した。路面すべり摩擦係数の測定機器については、当初は第5輪牽引型の測定車であったが、福井大学が所有する非接触型測定機器に変更した。高速道路での走行試験は計6日実施し、気象や路面状態の条件が合わず、2日のみ検証用のデータを取得できた。 以上、研究実施の環境が変わったものの、室内実験と凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの開発については順調に進展した。走行試験については予定の4日分のデータを取得できなかったものの、走行試験の装置と方法が確立できたため、今後の測定で不足分を十分に補うことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、走行試験と凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性検証を行う。走行試験では、塩分濃度測定車を開発した企業と共同研究を開始したので、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性検証の項目として塩分濃度を追加する。試験地は、道路管理者から凍結防止剤の散布情報を入手できることになった北陸自動車道とする。ただし、気象条件によっては東海北陸道や高規格道路など別路線での試験を検討する。 室内実験については研究計画を一部変更する。当初の計画では塩化カルシウムの散布にも適応できるように室内実験を実施する予定であったが、塩化カルシウムは北陸地方では散布実績が少なく優先度が低いと判断した。この室内実験の予算は、走行試験実施や試験結果分析の費用に回す。加えて、新たな車載式路面水膜厚計測装置の開発を目指すことにする。理由として、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアは路面の水膜厚を入力する必要があり、走行しながら水膜厚を測定することができれば、適切な塩散布を広域に評価することができる。同じ路線であっても橋梁と土工部、日照時間、地形などの違いによって局所的に路面凍結が発生することがあり、路線の塩散布の評価は実際の冬期道路管理において意義が高い。車載式路面水膜厚計測装置の開発について、本課題では室内実験を中心に装置の機構や測定方法について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究代表者の異動に伴い研究計画を見直したためである。特に、走行試験を委託する予定であったが、学生の研究として実施したため、試験の実施費用が大幅に減少した。 この異動後に共同研究を行うことになり、走行試験での測定項目と凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの妥当性検証の項目に塩分濃度を新たに追加した。使用計画としては、この塩分濃度の測定や分析にかかる費用に用いる。また、車載式路面水膜厚計測装置の開発を始めるため、この費用に充てる。
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